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R4年度物理学A

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R4年度物理学A(の前半部)では、高校の物理から大学の物理へ、即ち微分積分を用いることでニュートンの運動方程式から(高校では個別の法則として習っていた)数多くの法則が導出されることの説明を主として行いました。また、物理現象を微分方程式で記述し、解く、ということの必要性と重要性も、それなりに説明したつもりではあります。ただその一方で、他のクラスと比べると具体的な問題を解くことに費やした時間は少なかったとも思います。期末テストにおいてはいくつか問題を解いてもらわなければなりません1ので、まあここらへんは解けるようになっておいてね2という意図で、いくつかの例題をのっけておきます3

問題1

ばねの端部に質量mの質点がある。質点に働く力Fはばねの伸びxの4乗4に比例し、F=-kx^4と表現されるものとする。ばねをつり合いの位置から長さa引っ張って静かに手を離した場合、質点の最高速度を求めよ。

[ポイント/略解]

運動方程式からエネルギー保存則がどのように導かれるのか、またポテンシャルとは何か、どの様に表されるべきものなのか、を理解しているかどうか。問題そのものはエネルギー保存則を使って解くのが楽。\frac{1}{2}m(\frac{dx}{dt})^2+U=一定となるわけだが、力が伸びに比例するわけではないのでU\frac{1}{2}kx^2とはならないことに注意。もちろん運動方程式を解いてもよい。

問題2

時刻0において、質点mを水平面に対して角度\theta、初速v_0で射出する。質点に対しては鉛直下向きに重力mgが、進行方向逆向きに速さに比例する粘性力(空気による抵抗)が働くものとする。時刻0における質点の水平方向位置をx_0、鉛直方向位置をy_0としたとき、時刻tにおける質点の位置をtの関数として表せ。ただし粘性係数を\gammaとする。

[ポイント/略解]

微分方程式として運動方程式をたて、それを解くことで運動の様子を表現する、ということができているか。xy方向の運動方程式はそれぞれm\frac{d^2x(t)}{dt^2}=-\gamma\frac{dx(t)}{dt}
m\frac{d^2y(t)}{dt^2}=-\gamma\frac{dy(t)}{dt}-mgこいつらを、初期条件x(0)=x_0\frac{dx}{dt}|_{t=0}=v_0 \cos\thetay(0)=y_0\frac{dx}{dt}|_{t=0}=v_0 \sin\thetaの下で解けばよい。粘性係数\gammaの値によって水平方向到達距離がどのように変わるかとか色々と問題は作れるので、運動の様子を微分方程式で記述し、それを解くということには慣れておくこと。

問題3

粗い水平面を運動する質量mの物体がばね定数kのばねに衝突する。物体と水平面との動摩擦係数は\mu'である。物体がばねに接触し始める時の速さはv_0であった。物体がばねに接触した瞬間を時刻0として、ばねの縮みを時刻tの関数として表し、ばねが最も縮む時刻とそのときのばねの縮みを示せ。

[ポイント/略解]

問題2のもうちょっと複雑なパターン。運動方程式m\frac{d^2x}{dt^2}=-kx-\mu'mgをまじめに解くと、変数変化法とかをがりがり使って、x=v_0\sqrt{\frac{m}{k}}sin\sqrt{\frac{k}{m}}t+\frac{\mu'mg}{k}cos\sqrt{\frac{k}{m}}t-\frac{\mu'mg}{k}。ばねが最も縮むのは速さが0になる時なので、\frac{dx}{dt}=0より、v_0cos\sqrt{\frac{k}{m}}t-\frac{\mu'mg}{k}\sqrt{\frac{k}{m}}sin\sqrt{\frac{k}{m}}t=0。よってその時の時刻t'tan\sqrt{\frac{k}{m}}t'=\frac{v_0k}{\mu'mg}\sqrt{\frac{m}{k}}を満足する。即ち、ばねが最も縮む時刻はt'=arctan(\frac{v_0k}{\mu'mg}\sqrt{\frac{m}{k}})/\sqrt{k/m}。このときcos\sqrt{\frac{k}{m}}t'=\mu'mg/\{(\mu'mg)^2+v_0^2km\}^{1/2}sin\sqrt{\frac{k}{m}}t'=v_0k\sqrt{m/k}/\{(\mu'mg)^2+v_0^2km\}^{1/2}。これを運動方程式の解に代入すると、最大の縮みは\frac{1}{k}\{-\mu'mg+\sqrt{(\mu'mg)^2+v_0^2km}\}

尚、教科書の問題4.3-1で問われているばねが最大でどれくらい縮むかは、それは運動エネルギーがばねのエネルギー+摩擦による仕事に変換されたと考えれば、\frac{1}{2}mv_0^2=\frac{1}{2}kx^2+\mu'mgxとして、すぐに求まる5

問題4

質量mの質点の運動方程式m\frac{d^2\vec{r}}{dt^2}=\vec{F}から質点に働くトルクと質点の角運動量の関係を導き、中心力のみを受けて運動する質点は面積速度一定となることを示せ。尚ここで面積速度とは質点と力の中心を結ぶ線分が単位時間あたりに掃過する面積のことをいう。

[ポイント/略解]

運動方程式から角運動量の式を導出できるか(ベクトルの外積の性質を理解しているか)。

問題5

図に示すように、原点に静止しておりx軸に対して角度\alpha方向に重さの無視できる棒を有する質点1と、y軸に平行に移動する質点2を考える。質点2が(lcos\alpha, lsin\alpha)において棒に衝突し、以後は質点1、棒、質点2が一体となって運動するものとする。衝突前後で質点の運動エネルギーの和が\alphaによりどのように変化するか求めよ。ただし質点1と質点2の質量をそれぞれm_1m_2とし、質点2の衝突前の速度をv_{2,0}とする。(教科書6.5(3)の問題を少し詳しく)

[ポイント/略解]

2質点の衝突について理解しているか(高校の範囲だけではなく角運動量保存のところまで)。

外力が働いていないので、系の運動量\vec{p}と角運動量\vec{L}は保存する。

衝突後の重心の運動を考える。衝突前は\vec{p}=m_1(0, 0)^T+m_2(0, v_{2,0})^T。よって衝突後の重心の速度\vec{V}(m_1+m_2)\vec{V}=(0,m_2v_{2,0})^Tより\vec{V}=(0, m_2v_{2,0}/(m_1+m_2))^T。衝突時の重心の位置は(m_2lcos\alpha/(m_1+ m_2), m_2lsin\alpha/(m_1+m_2))なので、衝突が時刻0だとすると、時刻tにおける重心の位置ベクトル\vec{R}\vec{R}=\frac{m_2}{m_1+m_2}(lcos\alpha, lsin\alpha+v_{2,0}t)^T

次に重心周りの角運動量\vec{L}_0を計算すると、\vec{L}_0=\frac{m_1}{m_1+m_2}(lcos\alpha, lsin\alpha,0)^T\times m_2(0, v_{2,0},0)^T(重心から衝突点までの位置ベクトル×質点2の運動量ベクトル。xy平面での回転の表現のために3次元ベクトルとして表した)。計算進めて\vec{L}_0=(0, 0, \frac{m_1m_2lcos\alpha v_{2,0}}{m_1+m_2})^T。よって角速度一定で回転することになる。

回転の角速度\omegaを求める。重心から2質点までの距離はl_1=\frac{m_2}{m_1+m_2}l, l_2=\frac{m_1}{m_1+m_2}l。よって、重心周りの角運動量はm_1 l_1^2\omega+m_2 l_2^2\omega=\frac{m_1m_2}{m_1+m_2}l^2\omega^2と書くことができる。これが上で得られた\frac{m_1m_2lcos\alpha}{m_1+m_2}に等しいので、\omega=\frac{lcos\alpha v_{2,0}}{l^2}となる。

系の運動エネルギーは【重心の運動エネルギー】+【2質点の換算質量を有する1質点が2質点の相対運動と同じ運動をするときの運動エネルギー】でも与えられる。重心の運動状態は衝突の前と後で同じなので、2つ目の【】の増減のみを考えればよい。衝突前は明らかに\frac{1}{2}m_2v_{2,0}^2。衝突後は、質点1から見た質点2の位置ベクトルは(l_2cos\omega t, l_2sin\omega t)^T-(l_1 cos(\omega t+\pi), l_1 sin(\omega t+\pi))^T=(l_2+l_1)(cos\omega t, sin\omega t)^T=l(cos\omega t, sin\omega t)^Tなので、運動エネルギーは\frac{1}{2}m(l\omega)^2=\frac{1}{2}m\frac{(lcos\alpha)^2}{l^2}v_{2,0}^2

以上より、衝突後の運動エネルギーは衝突前の(cos\alpha)^2倍になる(cos\alpha=1の場合、衝突の方向と動き出す方向が同じなので、エネルギーロスがない、ともみなすことができる)。

問題6

問題5において質点1が原点に固定されている場合、衝突後の運動はどのようになるか。(これも教科書6.5(3))

[ポイント/略解]

まず定性的に考えてみる。質点1が動かないわけだから、片開きのドアに体当たりしたような状態なわけなので、質点1を中心にして回転すると思われる6

で、定量的に議論するためにはm_1 \gt\gt m_2の状況を考えればよい。\vec{R}=\frac{m_2}{m_1+m_2}(a, lsin\alpha+v_{2,0}t)^T\fallingdotseq 0なので、重心の位置は動かない。また、m_1\gt\gt m_2より、重心の位置はm_1に一致する。角運動量は\vec{L}=\frac{m_1}{m_1+m_2}(lcos\alpha, lsin\alpha)^T \times m_2 (0,v_{2,0})^T。3次元ベクトルで書くと(0, 0, \frac{m_1 m_2 a v_{2,0}}{m_1+m_2})^T \fallingdotseq (0, 0, m_2av_{2,0})^T。よって角速度\omega=\frac{av_{2,0}}{l^2}で回転する。尚ここで質点2の速度はl\omega=\frac{av_{2,0}}{l}より\vec{v}_2=\frac{av_{2,0}}{l}(-sin\alpha, cos\alpha)^Tとなり、運動量は保存していないことに注意。


  1. 実のところ教科書にある例題のかなりのものは高校までの物理で解けるものです。が、それらを期末テストに出題することは物理学Aの意図と異なったメッセージを与えてしまうものと危惧します。なので、期末テストではなるべく高校の物理では解けない(微分積分等を使わないと解けない、わからない)問題を出すことになると思います。
  2. 正確には解ければいいというわけではなく、解けるくらいまでには物理学を理解しておいてね、という意味です。
  3. 注意:私担当の前半部(質点系の力学まで)についてです。後半部(剛体以降)のものは含まれていません。
  4. 1乗に比例するというのがよくある場合。
  5. ので、問題を解くという意味ではそちらの方が効率的なのですが、まじめに運動方程式を解いてがりがり計算した結果が一致するというのは、結構感動するので一度やってみてください。
  6. いきなり数式をいじるのではなく、まずこういう風にどんな現象が起こるのか考えることは重要。

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