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h-indexについて

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こちら東北大学でも研究活動及び成果の数値化は進んでおり、一般に公開している教員教育活動データベースである東北大学スカラーでは、各教員のh-indexも表示されるようになりました。h-indexの定義などはWikipediaあたりを見てもらえばと思いますが、実のところ学生が指導教員や研究室を選ぶ際には、h-indexはちょっとミスリーディングな面があるのも確かだったりもします。なので、ここではあえてh-indexの問題点を挙げてみたいと思います1

一つの指標であり、すべてを表すものではありません。

そもそも論になってしまいますが、h-indexはあくまで発表論文の引用数に基づくものなので、引用数以外のものを考慮していません。また、引用数のみを考えた場合でも、h-indexが唯一の指標というわけではありません。g-indexhg-indexm-index等、色々なものがあります2。正直色々な研究をやっている人たちを1つの物差しで評価すること自体無理があるわけですので、単にh-indexの値が大きければよい、というのは明らかな間違いです。

個人の数値ですが、本当に個人の数値なのかは微妙なものがあります。

h-index自体は個人につく数値です(**先生のh-indexは**、みたいに)。しかしながら、h-indexは発表した論文の引用数に基づいて計算されますので、本当にその人の業績(貢献)を反映しているとは限りません。ほとんど貢献がない論文3の引用でも単一著者4の論文の引用でも、h-indexに対する寄与は全く同じです。極端な話、h-indexは高い、けれども自身のh-indexに寄与している論文5に対する貢献度は低い、ということもありうるわけです6

共著者数を考慮していません。

上とも関係しますが、これが特に大きな問題の一つです。著者が100人いる論文7が100回引用された場合でも、自分だけが著者の論文が100回引用された場合でもh-indexに対する寄与は同じですが、それで本当にいいの、というのは明らかだと思います8

分野の違いを考慮していません。

これも非常に大きな問題です。分野によって論文中でどれくらい他の論文を引用するのかはかなりの差異があり、結果として引用数が多い分野、少ない分野というのは明らかに存在します。違う分野の研究者をh-indexに基づいて比較するというのはそもそも無理があります9

これまでの積み重ねに対するものであり、現状を反映しているとは限りません。

h-indexはこれまでに発表した論文が何回引用されたかに基づいて算出されるものです。なので、すでに行っていない研究に関して過去に発表した論文が引用されることで、h-indexが高くなっているということは、往々にしてありうることです10

世代が違えば比較できません。

世界的に論文数は急増しており11、それに伴って論文の引用数も急増しています。分野が大体同じでも、上の世代の人の昔よりも今の若い方のほうがh-indexが高いということは往々にしてあるのですが、それは少なからずこのような理由によるものです。個人的な意見ですが、多分10歳違えばh-indexを比較することはできない12と思います。

と、色々と書きましたが、このサイトの趣旨である研究室選びという意味では「研究室や指導教員を選ぶときに、h-indexはあくまで参考程度にしてください」ということです。


  1. h-indexの存在を否定しようという意図はありません。使い方次第ということです。
  2. indexにせずとも、総引用数だけでいいじゃない、とも考えられるわけです。
  3. であれば本来著者に含めないというのはその通りですが、まあAuthorかAcknowledgementか微妙な線だった、というくらいとしてください。
  4. なので当然研究としての貢献も自身が100%。
  5. つまり自身の論文の中で引用数が多い論文ということです。
  6. これは同じ分野の研究者であればなんとなくわかるのですが、逆に言いますと、同じ分野の研究者以外ではまずわかりません。
  7. 大型プロジェクトに関する発表であれば珍しいことではないと思います。
  8. Individual h-indexなるものもありますが。
  9. まあ、1と100とかだったら別ですが。
  10. 学生が指導教員を選ぶという観点では、h-indexが示すのが、かつての栄光なのかそれとも現在の活動なのかはわからない、ということです。
  11. 色々と理由はありますが、それはまた別の機会に。
  12. つまり**先生は〇〇先生の10年前よりもh-indexが高いので**先生は〇〇先生よりも研究業績がある、的な。

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