Instruction Under construction べからず集

研究をはじめるにあたっての諸注意

更新日:

当研究室において研究を行うにあたっての一般的な注意事項です。基本的には研究を始めたばかりの卒論生~M1向けの情報なので、M2以上であれば強く同意してくれる、はずです1

under construction...

目的の明確化は重要。ただし柔軟性も重要。

今やっていることの目的をしっかり把握せずにただ手を動かすというのは往々にして陥りがちなパターンです。色々とやっているとついつい今やっていること自体が目的と感じてしまうのですが、普通は最終的には**をしたい、そのためには**が必要なので、その前段階としてまず**をやっている、的な階層構造があるはずです。それを常に認識し、目的と手段を取り間違えないようにしてください。一方で、やってみないとわからないのでとりあえずやる、といった場合や、新たな知見が得られたり状況が変わったことによる目的も含む計画の変更、なども多々あることです。当初の目的2に固執しないようにしてください3

スケジュール管理を怠らないこと。

いつの時点で何をやる、というスケジュール管理を怠らないでください。研究室としては、大体1年くらいのスパンで、こんな感じの結果をこの学会で発表しようとか、中間審査まではこれをやって最終審査までにはこれをやろう、といったことはちゃんと議論し、明確化するようにしています。が、それを踏まえて何をいつまでにどうやるという具体的な計画を立てることは各人に相当程度任せています。自身のスケジュール管理は怠らないようにしてください4

予定通りに進むと思わないこと。

上とも関連しますが、まずは何よりもこれです。最初のころは多分倍の時間で半分も出来ればいい方です。スケジュールには十分な余裕を持たせてください5。経験を積んでくると、自分の能力を踏まえた上での目的達成に要する時間の見積が徐々に正確になってはいきます。が、最初からは無理です。こんなに早くやらなくていいだろう、というくらいのスケジュールで進めるようにしてください。

自分の記憶力を過信しないこと。

最初のうちは自身の研究に関する情報もそれほど多くないので、全部覚えていられるように感じるとは思います。が、それでは研究が進むにつれて必ず破綻します6。1年前に行った実験や解析をもう一度やる必要があるなんてことは普通にありますので、何をどのようにやったかがわかるように、十分な情報を自身のラボノートに残すようにしてください(当研究室としてのラボノートの書き方の指針はこちら)。尚、自分が忘れていることを他人のせいにするような人間になってはいけません。

生データは絶対に残しておくこと。

発表の際に生データを見せることはほとんどなく、生データに基づく何らかの数値をグラフなどの形にまとめたものに基づいて何らかの主張を行うことになると思います。が、研究室内の議論はあくまで生データに基づいて行われますし、数か月以上の後にやっぱりあれどうだったの、的な検討のために自身のデータを見直す必要に迫られるということも普通にあることです7。何をどうやりその結果何が得られた、ということについての情報をしっかり残すためにも、生データは必ず残すようにしてください。

手順の妥当性を検証せずに本実験/本解析を始めないこと。

前例がないことをやっているわけですから、どうやればうまくいくのか、ということは正直誰もわかりません。唯一出来るのは、いろいろと試した結果、明らかに間違っているという結果は得られていないので、多分このやり方は正しいのだろう、ということ方法だけです。当然こうなるべきという結果がちゃんと得られているのか、神経質なくらい「正しくないとは言えない」というチェックを行ってください。

どんな結果になるか、を予想してから実験/解析を行うこと。

実際にどんな結果になるかはやってみないとわからないというのは事実ですが、それでも、***なのだから多分***なるだろう、という予測を立ててから実験/解析を行うようにしてください。そうでないと、結局出てきた結果を鵜呑みにするだけになってしまいます。誤った結果が得られたときに何かおかしいと気づけるかどうかは非常に重要です。

データはまず疑ってかかること。

いいデータが出たときほど疑問を持つようにしてください。予想外の結果が出た場合、往往にしてそれは自身の間違いに起因するものです。事前にどんな結果が得られるはず、という予想を立てることは重要ですが、それ以上に得られた結果は本当にそうなのか、という疑いの目を持つことが重要です。結果を受け入れるのは、得られたデータが何かの誤りに起因するものではないという確信の後にのみ、としてください8

周囲と議論する/周囲に助けを求めることを厭わないこと。

自分一人で悩みぬくことは重要です。が、周囲と議論することはおそらくもっと重要です。 特に最初のうちは知識も経験も全く足りていないのが当然ですので、周囲と議論すること、特に先輩にアドバイスを求めることは、全く恥じることではなく、むしろ推奨されていることです9。また、**が足りない(人手が足りない、も含めて)ということであれば、すぐに指導教員に相談してください。一人だけで何とかしようという考えは基本的に捨てて、周囲と協力10して目的を達成するんだ11という意識で研究を進めてください12

データのバックアップを忘れないこと。

いざ論文としてまとめるという段階になって何故かよく起こるのがPCトラブルです13。データがすぐに取り出せればまだいいのですが、データも吹っ飛んだとなると目も当てられません14。なので、せめて数か月に一度、できればそれに加えて何らかの具体的な進展がある度にデータのバックアップを取るようにしてください15。使っているPCからカリカリと異音がしだしたら即。

情報収集と勉強を怠らないこと。

思うところがあることは理解しますが、与えられた課題に対しては、自分が世界の誰よりも理解しているのだ、と言えるべきです。関連研究の最新動向調査や、それらの内容を理解するための勉強を怠ってはいけません。ある与えられた枠組みの中であっても、言われたことをただやるのと自分が提案したことを自分の責任でやるのでは、充実感が大きく異なってくるはずです。 言われたことをただやるのではなく、そういうことならば**はこうやっているので我々はこうやるべきです、と具体的な方針を提案できるようになってください16

研究指導方針について一通り目を通しておくこと。

詳細こちら。研究室側が当然と思っていることでも、新メンバーにとってはそうでないということは多々あります。研究指導は講義とは全く異なります17。当研究室では学生にとっての研究をこのように位置付けている、なのでこのような方針で研究指導をしているということは当サイトにてそれなりに詳細に述べていますので、一通り目を通すようにしておいてください18

指導教員を信用しないこと。

詳細こちら


  1. また、書かれている内容自体は研究の進め方に限ったことではなく、仕事一般について当てはまるものだということをも理解してもらえると思います。
  2. その目的がより高いレベルでは手段の一つに過ぎないということもありうるわけです。
  3. といってもこれはむしろ指導教員マターでもあります(M2以上は別かもしれませんが)。学生は早めの報告と議論を、というのが適切なところかもしれません。
  4. 当初計画が無理っぽいということが分かったのであれば、その時点ですぐに議論して再調整しましょう、ということでもあります。
  5. 1回でうまくいくことを前提にするなんてのは論外です。
  6. 加齢に伴う記憶力の低下は予想以上のものです。
  7. そして何よりも自身の主張の妥当性を示すためには生データを持っていることが絶対に必要です。
  8. これを突き詰めていくと人間不信に陥ってしまうのですが。
  9. それは実は先輩にとっても勉強になるという意味で重要なことなのです(指導教員が楽できるというのはあくまで副産物です)。
  10. ただ、自分の研究はあくまで自分が主体的に、です。
  11. ある目的を持った集団における適切な周囲との関係性構築方法について学んでいるんだ、と思ってもらっても結構です。
  12. ただし、自分が先輩になったら後輩にアドバイスするのは当然です。やってもらって当然、けど自分はやってやらない、は無し(指導教員が楽できるというのはあくまで副産物です)。
  13. 研究版マーフィーの法則。論文としてまとめる段階に至るまではそれなりにPCを酷使しているはずなので、実は本当にそのような傾向があるのかもしません。
  14. 疲れてきて思考回路が弱ってくると、意図したのとは違うディレクトリでrm -rfなんてこともやってしまったりするのです。
  15. 研究室としては各人に1台外付けHDDを支給しています。3-2-1ルールからするとそれだけでは不足なのですが、お金がありません。
  16. 指導教員が楽をしたいという面があることは否定しません。
  17. ので、講義(や学生実験)と同じように考えて研究室での研究となると、非常に得るもの少ない研究生活となってしまうのです。
  18. 原則ではありますが、絶対的なものではありません。ので、実際には状況に応じて柔軟に対応してはいます。

-Instruction, Under construction, べからず集

Copyright© Yusa Laboratory , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.