通常理工学系の大学では卒業研究が課されており、また大学院においては講義よりもむしろ研究に重きが置かれています。
私自身は、研究を通じて得るものは大きく、学部までの所謂教科書の内容を学びましょうというものよりもずっと意味があるものだと思います。しかしながら、学生にとっては新しい問題に取り組むということは初めての経験ですので、非常にストレスが大きいのも確かです。まじめな学生ほど、研究がうまくいかない→焦ってもっとうまくいかなくなる→自分は駄目だ→研究嫌→研究やりたくない→やらないので結果が出ない、といった感じのデフレスパイラルにはまりかねないのかもしれません。
どうやれば研究はうまくいくのか、ということは正直私自身もわかりません1。が、個人的な経験からではありますが、その逆に、「研究がうまくいかない」ことには結構共通の原因があるように思います。なので、それが原因だったんだということの気づきに繋がることを期待して、あなたの研究がうまくいかないのは下記のような理由からではないですか?(なのでまずはそれらを解消しましょう)ということを書き連ねてみます。結構ここやこことかぶっていますが。
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研究室に行っていない
まずはこれです。研究室に行かなくてもデータ分析や論文読みはできるというのはその通りなのですが、実際にそうかというと、全くそんなことはありません。コロナで一気に広がったリモートワークのその後の状況からわかるように、自宅でもしっかり働けるというのはごく一握り2のプロフェッショナル3な方々だけで、ましてやスキルも経験もない4初学者には無理です。なので、まずは研究室に行きましょう5。行かないと行きづらくなる→ますます研究進まない→研究のことを考えたくなくてさらに研究室から足が遠ざかる→・・・、という悪循環にはまらないように気を付けてください。
周囲とコミュニケーションをとっていない
上記のように6研究室に行くことは大前提ですが、ただ行っていればOKという話ではありません。研究室の先輩や教員とどれだけ自身の研究について話していますでしょうか?研究室には来ている、けれども自分の席ではいつもイヤホンで何かを聞いている、他の研究室メンバーとは雑談的な話しかしない、というのであれば実のところ7研究室に来ていないのと変わりません。経験上、研究が進んでいる学生ほど私(一応教員)と議論を行っています(より正確には、学生の方から議論や打ち合わせの打診が来ます。因果関係かはわかりませんが、相関関係があるのは確かです。)。話しかけづらい教員がいることを否定しませんが、中長期的な事柄についてはちゃんと教員と議論/相談しましょう。
研究室のカラーとあっていない
これは正直難しいところです。ただ、大学の研究室も人の集まりである以上、研究室のカラー的なものあるのは事実です8。もちろん研究室側も改めるべきところは改めるべきですが、すべての学生の要望に100%応えるということは現実的に無理だと思います。なので、どうしても研究室9があわないと思うのであれば研究室を変えましょう10。あまりに自分と会わない環境に長期間いると病んでしまいます11。
嫌々ながらやっている
大学院の研究テーマは与えられたものであることが大半だと思います12。だからといって、つまんねーなー、自分で決めたことじゃないしーとか思っていると、主体的に取り組めない→とりあえず手を動かすだけ→よくわからないけどやらされている感→よくわからない結果が出てそれを報告するとぼろくそに言われる→やる気なくなる→ますます主体的に取り組めなくなる→・・・、となりかねません。なので、まずは与えられたテーマに関して、自分事13として主体的に、かつ真剣に取り組むことが第一歩だと思います14。また、真剣に取り組んでいると結構面白くなってくるものなのです。面白い→もっとやる→成果も出る→もっと面白くなる→・・・というループに早く入りましょう。
「知りませんでした」との発言が多い
知らなかったのはその通りなのでしょうが、これは実は「教えてもらっていないので仕方がないです→私は悪くないんです」ということを主張しているというのが大半です15。知らないのであれば、まずはちゃんと聞く、調べるというのが本来の姿勢でして16、知らなかったんだから仕方がないとか教えてくれなかったのが悪い17といったことを主張するべきではありません18。
言い訳が多い
何か問題が起きた場合やうまくいっていない場合などに教員が状況や理由などを聞くことはあると思います。それは叱責したり罰を与えるためではなく19一緒に問題を解決/状況を改善するため20なのですが、その際「自分は悪くない」「仕方がなかった」的なことを主張する学生がいないわけではありません21。これではその問題の解決が遠のくだけではなく、失敗から学ぶことも難しくなります。他責思考ではなく自責思考でないと研究22はうまくいかないと思います。
抱え込む
「うまくいっていない」ことを人に伝えるのは当然気が進むものではありません。が、実際にはそのような時ほど人と相談しなければなりません。直接的ではないとしても、誰かと少し相談するだけで答えが見つかるということはよくあることです。研究はテストとは違います。自分一人だけで答えを出す必要は全くないのです23。うまくいっていないことを恥ずかしいと思わず、うまくいっていないときほど周りに聞くようにしましょう。
わからない、からやらない
これも結構ありがち24です。「こうやればうまくいくはずなんだ」という信念をもつことは非常に重要だとは思います。が、実のところ「新しい手法を学ぶのはめんどくさい」ので、(うまくいかない可能性が高いことが分かっているにもかかわらず)同じ手法を適用しているという場合が大半だったりします。自分のこだわりは、本当に信念から来ているのかそれともただの怠慢なのかを認識することが重要だと思います25。
検証しない
結果が出た=正しい結果が出た、では全くありません。結果を出すことと正しい結果を出すことは全く別物です。残念なことに、特に初学者はこの点を理解せず、結果が出た=もうこれで解決と認識してしまいがちです。それっぽい結果が出たというのは第一段階クリアにすぎません。その後嫌になるくらい「明らかに間違っている理由があるわけでない」を積み重ねる必要があることを理解してください26。
優先順位が付けられていない
本来Aを先にやるべきところ、そっちの方が簡単そうだから/楽しそうだからといった理由で27Bを先にやっている、ということは非常にありがちです28。経験不足のためという面はあるのかもしれませんが、本質的にはもうちょっと高い視点をもつ29ことが必要なんだと思います。
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- むしろ教えてもらいたいくらいです。
- 一つまみかもしれません。
- &人の目が無くても自分を律することができる
- 私のように常日頃心の悪魔の余裕勝ちな人間も
- 研究室というのは単に自分の研究をやる場所ではなく、教員や先輩後輩との色々な相互作用により刺激を受ける(受けられる)場でもあります。授業料払っているのにそのような機会を利用しないのはもったいないんじゃないでしょうか。
- 初学者であるならば
- 研究の進みという意味で。
- 多分に研究室のボスの考え方や人間性に依存するものであることは否定しません。
- 教員?
- ただ、筋は通しましょう。具体的な手続きやその難易度は大学&学科or専攻次第と思いますが。
- 学生にとって研究室とは自分の将来のための場所で、将来をつぶす場所では決してないはずです。
- JSPS DCの場合は自分で提案したテーマなのでまた別ですが。
- 指導教員はわかってないんだからむしろ自分が教えてやるくらいの気持ちで。
- 就職後新入社員にだれが見ても面白い業務なんてやらせるわけがありません(上司にとっては、つまらない作業的な業務は下に与えて、自分はもっと楽しい業務をというのが当然の選択肢です)。
- 無意識のうちに、なのかもしれませんが、だとすると自分で意識せずにそのような他責的な考えに染まっているということで、ますますまずいと思います。
- 研究に限らず、です。
- 多少逆説的ではありますが、お前が何を知らないかなんて知るわけないだろう、というのが世の中です。
- これに関しては、教えていない内容を含む答案は×にするという妙な教育の影響もあるのかもしれません。先日も18÷0を答えなしとしたら×となったなんていうネットニュースがありましたし。
- 内心そう思っていることはあるでしょうが。
- ため、のはず。
- 信頼関係が築けていないのかもしれません。
- に限らず仕事は。
- これは仕事一般でも同じだと思います。
- 自分自身への自戒も込めて。
- 対案を出さずに「やらない理由」「できない理由」だけを主張する輩とは一緒に仕事をしたくない、と思うのは普通だと思います。
- 未解決の問題に取り組んでいるのですから、教科書のように後ろの方に答えが書いてあるというわけでは全くありません。正しいことの証明は極めて難しく、普通は「間違っているわけでない」だけがいえるのです。
- もしくはあんまり考えずに
- ちゃんと検証せずにいきなり本測定や本解析を始めていたり、実験のセットアップを行う際に各種発注が後回しになっているというのは典型例です。
- 自分のやっていることの意味や位置づけを把握するという意味で。