2012年度の記録です。2013年度については、こちらの2013科学と社会を参照。

科学と社会(2012年度)

科学的不確実性下の社会的判断と科学者の役割

担当:本堂 毅    ゲスト:中島貴子さん

科学と社会  全体ポスター 中島貴子氏 1/11 講演ポスター
科学と社会 講演 中島貴子 gmine

日程

2013年
1月11日(金)13:00〜18:00
第2講義室(理学研究科合同A棟2階 204号室)
♦13:00〜16:30 科学の不定性と社会的判断について
♦16:30〜18:00 中島貴子氏 講演
1月12日(土) 10:00〜12:00
第3講義室(理学研究科合同A棟2階 205号室)
内容:全体討論

授業の目的と概要

震災以降,社会の中での専門家のあり方がこれまで以上に問われている.

科学者は専門知識の生産者として,その知識の発信者として,あるいは市民の科学観に関わる科学教育を担う者として,社会的な位置を占め,その責任を負っている.

日本学術会議の声明「科学者の行動規範について」(2006)では,「科学者の責任」を 『科学者は、自らが生み出す専門知識や技術の質を担保する責任を有し、 さらに自らの専門知識、技術、経験を活かして、人類の健康と福祉、社会の安全と安寧、 そして地球環境の持続性に貢献するという責任を有する。』と延べる.
また,「説明と公開」では,『科学者は、自らが携わる研究の意義と役割を公開して積極的に説明し、その研究が人間、社会、環境に及ぼし得る影響や起こし得る変化を評価し、その結果を中立性・客観性をもって公表すると共に、社会との建設的な対話を築くように努める。』と述べる.
一方,大震災からも明らかなように,私たち科学者は科学的不確実性の高い科学的知見も,その社会的判断の材料として評価し,社会に伝えることが求められる.理科の授業のように,唯一の正しい答えがある状況ならともかく,不確実性が高い状況で私たち科学者は「中立性」や「客観性」をどのような形で保ち,社会との建設的な対話を築きうるのだろうか.

社会には多様な立場や価値判断が存在する.そのため,同一の科学的評価の下でも,様々な社会的判断がありうる.そこに科学的評価の不確実性が加わるとき,社会との接点での科学者と,それを取り巻く制度は,どのようにあるべきだろうか.

本講義では初日に,この問題で先駆的な研究を行ってきたStirlingの科学的不定性(scientific incertitude)類型 (Nature, 468:1029, 2010)を取り上げ, 中島貴子氏の特別講義で具体例を学ぶ.翌日に全体討論を行い, 科学的中立性・客観性,科学者の役割について,不可欠な論点を明らかにする.

1月11日(金) 16:30〜18:00講演「科学技術のリスク評価における非専門家の役割−戦後日本の食品安全問題を中心に」 概要

科学に基づく技術(科学技術)は両刃の剣である。

そして、科学技術のリスク評価を誤ると、後に「想定外」の損害が発生するばかりか、リスク評価を行った専門家集団への信頼が失墜する場合がある。

これはさまざまな分野で、また世界各地で知られていた事実である。

東日本大震災(とりわけ福島原発事故)はあらためてこの事実を我々につきつけた。
では、「想定外」の損害を招かない、もしくは、損害を最小化するようなリスク評価、あるいは、後顧の憂いのないリスク評価はどうすればよいのだろうか。

ひとつの鍵は、リスク評価に内包される科学的根拠の不定性の特性と、リスク評価に関与する担い手の特性の再考にあるのではないか。

このような問題意識に立って、戦後日本の典型的な食品安全問題を例に、科学技術のリスク評価における非専門家の役割について検討する。


中島貴子先生の顔写真

中島貴子先生のプロフィール
国際基督教大学非常勤講師。専門は科学史、科学技術社会論。 名古屋大学大学院農学系研究科(植物病理学)、東京大学大学院理学系研究科(科学史・科学哲学)修了。
主に戦後日本の食と農の科学技術史と政策を研究。
主な共著書『新通史日本の科学技術−世紀転換期の社会史1995年〜2011年第8部生命・環境・安全・防災』(原書房、2012)、『科学技術のポリティクス』(東京大学出版会、2008)

セミナーは大学院生のみならず教職員も含めたすべての方を対象にしたものです。どなたでも聴講可能です。

学習の到達目標

授業内容・方法と進度予定

集中講義形式:金曜日午後から土曜午前にセミナーを含む集中講義を1回開催する

それを踏まえて,各自が論点を考察しレポートを提出する.

レポートについて
締切:1月25日(金)
提出先:合同A棟308号室本堂 または 306号室大石
メール提出も可 hondou[のあとにatマーク]mail.sci.tohoku.ac.jp
問い合わせ:内線5823

教科書・参考書

成績評価の方法

授業参加,及びレポート

参考

2011年(ゲスト 尾内先生)の「科学コミュニケーション」の様子

その他

単位取得希望で未登録の学生は、教務課に相談して手続きをしてください。
その他、質問のある方は、本堂hondou[アット マーク]mail.sci.tohoku.ac.jp まで。

昨年はセミナーのあとに、懇親会を行いました。今年も予定しています。
懇親会への参加、不参加は自由です。具体的内容は決まり次第掲載します。

報告

「科学と社会」の模様

本堂准教授による参加型セミナーのあと、中島貴子さんの講演。質疑応答も活発に行われました。セミナー後の懇親会では、理学研究科や文学研究科の学生さん、教員の方々、遠く岡山県からご参加のお二人、理事、の面々が参加となり、科学と社会をテーマに幅広い意見を交わしながら、領域を横断して交流が深まりました。
翌日の全体討論では、科学の不定性と社会との関係について、より掘り下げた議論がなされました。