里見進 前総長がフランス国家功労勲章シュヴァリエを受章

 本学の前総長である里見進先生(現 独立行政法人日本学術振興会理事長)が、6月4日(金)、フィリップ・セトン駐日フランス大使により、国家功労勲章シュヴァリエを授与されました。これは、里見前総長のリーダーシップによる本学とフランスとの学術交流、特にリヨン大学との強固な連携構築に基づいた研究教育に対する貢献が高く評価されたものです。

 大使公邸で行われた叙勲式の返礼挨拶で里見前総長は、「この功績は多くの皆様の努力によって支えられてきたものです。」と、フランスとの交流を支えた関係者に感謝の意を述べられるとともに、本学とリヨンとの今後の交流発展に期待を寄せました。

 

東北大学とフランスとの学術交流
~リヨンを中心に~

はじめに

東北大学は1990年代から、ソルボンヌ大学やグルノーブル・アルプ大学連合、リヨン大学等、多くの著名なフランスの大学と交流を進めてきました。とりわけ、リヨン大学を形成する国立応用科学院リヨン校(INSA-Lyon)と国立中央理工科学校リヨン校(ECL)とは機械工学、材料科学、流体科学分野において共同研究が開始された後、相互リエゾンオフィスの設置などにより、研究交流が活発化しました。この交流は日本学術振興会(JSPS)とフランス国立科学センター(CNRS)とのマッチングファンドに基づく、重点研究国際共同事業や研究拠点形成事業に採択され、リヨンとの組織的共同研究に発展しました。

 

里見進 前総長就任後(2012年4月~2018年3月)の交流とその成果

里見前総長の就任後、そのリーダーシップによってリヨンとの交流は強固な連携へと進展することになります。

2013年9月に本学はリヨン大学との大学間協定に調印しました。これまでINSA-LyonやECLのほか、リヨン政治学院、リヨン高等師範学校、リヨン第2大学と個別に大学間協定がありましたが、その集合体であるリヨン大学と協定を締結することによって、傘下にある12の大学と25の関係機関との交流が可能になり、枠組みが飛躍的に拡大しました。

また、その際、里見前総長を始めとする本学代表団はINSA-Lyon及びECLと共同で実施するサマースクール(ELyT School)にも参加し、日仏の学生達から生の声を聞き、交流を深めました。

この訪問がきっかけとなり、東北大学とリヨン大学の交流は研究者間から大学間の交流へと急速に拡大し、2015年には日仏共同ジョイントラボラトリー(ELyTMaX)の開所、また、ダブルディグリープログラムへの参加学生の増加などにつながりました。

 

以下に、リヨンとの具体的な交流実績について示します。

1)リヨン大学と東北大学の大学間学術交流協定に調印(2013年9月)することで、リヨン大学に属する大学との個別の交流から、リヨン大学全体との交流に進展。

2)リヨン大学学長やリヨン大学に属する大学の学長等と頻繁に打ち合わせを持ち(延べ10回)、研究者交流、ダブルディグリーを含む学生交流、そして、共同研究所の設立の可能性について議論。

3)リヨン大学が提案する国際アライアンス創設式に出席(2015年6月)。日本からは東北大学と東京大学が招待。新たな国際学術交流や教育交流の進め方に関してのワークショップに出席して議論。

4)CNRSの枠組みでのUMI(国際連携研究所)をCNRS,リヨン大学、東北大学の3者で設立することに合意し、ELyTMaX ( Engineering Science Lyon-Tohoku for Material and Systems under Extreme Conditions)を東北大学内に設立することを決定。UMIとしては日本で3番目であり、大学が関与するUMI設立は初めて。その後、仙台での調印式や開所式を主催(2015年10月、2016年10月)。

5)ELyTMaXの2期目へ向けて、リヨン大学内にもELyTMaXのサイトを開設し(2018年3月)、東北大学の教員や学生が常駐して共同研究する仕組みを構築。

上記のとおり確立された本学とリヨンとの強固な連携基盤を通じて、以下の成果が生まれております。

1)在任期間である2012年度からの6年間に東北大学とリヨン大学間の交流数は、延べ約700人へ。

2)交流の核であるELyTMaXでは、開始後における共著論文はすでに70編にのぼり、また、いくつもの科学研究費補助金の他、NEDO助成金、フランス国立研究機構(ANR)等の外部資金を獲得するとともに、東北電力やDENSOなどとの産学共同研究にも発展。

3)さらに、ELyTの活動は2017年度から東北大学とリヨン大学連合との連携を中心にした、多国間かつ産学連携研究を指向するELyTGlobalにも展開され、国際共同研究が活性化。

4)学生交流の面では、INSA-Lyon及びECLとのダブルディグリープログラムにおいて、2006年度-2011年度に14名だった参加学生数は2012年度-2017年度では25名に増加。

5)2018年11月に、欧州にオフィス等を持つ日本の大学・学術機関等が協働して情報共有・交流を図ることを目的とするネットワーク“JANET”のフォーラムをINSA-Lyonを会場に東北大学が主催し、日仏から多くの関係者が参加。

6)2019年5月には、Gerard Collomb(ジェラール・コロン)リヨン市長を団長する、リヨン、ローヌアルプ州の大学や自治体、企業関係者からなる総勢29名の代表が本学を訪問し、宮城県も含めた国際産学官連携への発展につき意見交換。

7)2021年1月からはELyTMaXの第2期目が開始となり、リヨン大学、CNRS、東北大学から計19名の研究者と大学院学生が参加中。

 

このように、東北大学とリヨン大学との連携は揺るぎのないものとなり、今日の研究・教育の交流の発展へとつながっております。

 

さらに、東北大学とフランスとの学術交流は、ロレーヌ大学との共同研究ファンド事業の開始、仙台市の国際姉妹都市であるレンヌ(レンヌ第一大学、同第二大学)との研究連携、パリ南大学との研究拠点形成のほか、大学間・部局間協定校との交換留学等、拡大と深化が図られており、東北大学のグローバル化における重要な役割を果たしております。