2-1 マルチコアファイバのモード結合測定技術
マルチコアファイバは2010年前半ころより本格的に開発され始め、2025年にGoogleが所有する海底ケーブルへ実用される計画が進められている。
今後、マルチコアファイバはデータセンター、陸上光ケーブル網、ならびに5G/6Gシステムへ導入されていくことが期待されている。
マルチコアファイバを運営していく上で一つ重要な課題として、コア間の光の漏れ込み(モード結合)を監視することが挙げられる。
モード結合は応力付与部に局所的に発生するため、敷設後のマルチコアファイバのモード結合特性の評価技術が重要となる。
本研究室では、図2-1に示す複数台の同期した光時間領域リフレクトメトリ(OTDR: Optical Time Domain Reflectometry)装置を用いたモード結合測定技術を開発している。
光パルスを被測定ファイバへ入射し、各コア内で発生する後方レイリー散乱光(戻り光)の信号レベルよりファイバ長手方向のモード結合量の分布を測定することができる。
被測定ファイバの片端で測定を実施できることから敷設した光ファイバ網の管理に適している。
本測定技術を用いて研究テーマ1で開発する量子通信用マルチコアファイバ等の評価を行い、その通信性能の向上を目指している。

2-2 光ファイバ中のGAWBS雑音解析とその光センシング応用
光ファイバ中で生じる位相雑音の一つに、熱平衡状態の光ファイバ断面内に発生する横波の音響波とファイバ伝搬光が相互作用して生じる
導波音響波型ブリルアン散乱(GAWBS: Guided Acoustic Wave Brillouin Scattering)がある。図2-2の上に示すようにファイバ断面内に定在する音響モードにより屈折率変化が生じ、
そこを伝搬する光電界が位相変調を受ける現象である。
GAWBS雑音の大きさは屈折率変化の分布と、ファイバ中を伝搬する光電界分布との重なり積分で与えられる。
そのためGAWBS雑音に寄与する音響モードの次数はファイバ断面内のコアの位置に強く依存する(図2-2下参照)。研究テーマ1では
このGAWBS雑音特性の解析結果をもとに本雑音の補償技術を開発する。
また、ファイバ断面内の音響モードの共鳴周波数およびその線幅がファイバの温度や圧力に依存する関係を利用し、GAWBS雑音特性を用いたこれら物理量の光センシング応用を展開する。
