研究内容

光操作技術の新展開:メタマテリアル・生物模倣ナノ光学素子と微小機械の融合

メタマテリアルは入射波長よりも小さなサブ波長構造を単位素子とした人工光学材料で、負の屈折率や巨大群屈折率など自然界に存在しない様々な光学応答を実現できることが知られ、これまでにない新たな光操作技術を可能とします。本研究室では、微細加工技術を駆使したメタマテリアルの製作技術、微小機械により変形して光学特性の変わる可変メタマテリアル、メタマテリアル応用デバイスの研究開発を行っています。また、生物の持つ構造や機能を模倣し工学的に応用する生物模倣技術(バイオミメティクス)を応用した高効率なナノ光学素子の開発とデバイス応用を行っています。また、超低損失なナノ・マイクロ光デバイスを実現するために、水素雰囲気アニールにおける表面原子の自己拡散を利用したシリコン表面の新しいナノ加工・平滑化技術の開発を行っています。

「生物模倣ナノ光学素子~構造色利用カラーフィルタ、ナノ格子無反射構造(蛾の眼構造)~」

クジャクの鮮やかな羽根の色はナノ格子が発生する構造色によるものです。本構造を模倣したのが構造色利用カラーフィルタで、多彩な発色を可能としました。蛾の眼にはナノ格子無反射構造が形成されています。この構造を模倣し、シリコンの反射率を百分の一に低減したり、発光ダイオードの光取り出し効率を60% 程度向上しました。ナノインプリントによる安価な製造技術も開発しました。

図:ナノ格子無反射構造(蛾の眼構造)
図:構造色利用カラーフィルタ

「メタマテリアル:電磁波の自在制御を目指して」

メタマテリアルは構造性人工光学材料であり、そのユニークな電磁波モードは構造に依存するため、自然界に存在する物質が本来示さない革新的な光機能や目的に応じた電磁波制御を構造により可能とします。疑似電磁誘起透明化やFano 共鳴を発現するメタマテリアル、メタマテリアル吸収体、光電素子一体化メタマテリアルによるセンサ、機械式可変メタマテリアルを開発しました。

図:疑似電磁誘起透明化光メタマテリアル

「微小機械による光の動的制御 ~可動フォトニック結晶・可動メタマテリアル~」

フォトニック結晶は光波長程度の微細周期構造で、光を遮断・閉じ込める機能を持ちます。マイクロアクチュエータでフォトニック結晶を高精度に位置制御することで、フォトニック結晶ナノ光共振器の光結合効率を制御する波長選択フィルタや光遮断特性を制御する反射率可変フィルタを開発しました。また、構造可変電磁誘起透明化メタマテリアルを製作しTHz 波の透過率制御に成功しました。

図:光通信用スイッチングアドドロップフィルタ
図:光通信用反射率可変フィルタ

「シリコン表面の新しいナノ加工・平滑化技術の開発」

ドライエッチングされたシリコンの加工面は荒れており、デバイスの特性劣化や光学損失の原因となります。高温水素雰囲気中におけるシリコン表面原子の自己拡散による構造変形を超精密制御するナノ加工技術を開発しました。超低損失なナノ・マイクロ光デバイスや機械強度の優れたシリコン微小機械部品を実現します。基板表面だけでなく立体構造への超平滑化処理が可能です。

なお、本技術は金森研究室・坂口電熱・産総研との共同開発により、ミニマルレーザ水素アニール装置として装置化・製品化されました。
平成30年度 戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)採択。
関連サイト: http://sakaguchi-dennetsu.co.jp/lineup/exlaser/