二月中旬、山野に春の訪れを告げたマンサク*の黄色い花も散り始め、林床ではセリバオウレン**が今を盛りと咲き誇っている。
かれんな花を踏みつけないよう気遣いながら歩いていくと、不意にセーターの袖口を引っ張られた。ノイバラだ。鋭いトゲがしっかりと編み目に食い込んで離さない。
初夏、ノイバラは枝先に直径2cmほどの白い花を無数に付ける。芳香が漂い、ハチが蜜を求めて飛び交う。そんな季節が待ち遠しい。
雲が流れていく。顔を出した太陽を浴び、真っ赤な葉芽は一段と鮮やかさを増した。 |
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(河北新報社提供 初出 1991.3.27)
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