東北大学大学院工学研究科量子エネルギー工学専攻 / 東北大学機械知能・航空工学科
エネルギー物理工学講座 核融合プラズマ計測学分野
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飛田研究室
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当研究室で所有するDT-ALPHA装置について紹介します。
DT-ALPHA装置は高周波放電によりプラズマ生成を行う従来のダイバータプラズマ模擬装置と全く異なるタイプの装置です。高周波放電では電極を必要としないため、装置両端に様々な機器を接続することが可能です。DT-ALPHA装置はそのような特徴を最大限利用することで、体積再結合が強く進展するプラズマと高エネルギーイオン流が共存する環境を作り出す事ができる他に類を見ない独創的な装置です。装置周辺には複数のコイルが設置されており、任意の磁場配位を形成することが出来ます。DT-ALPHA装置で印加可能な磁場は最大で0.2 Tであり、小型装置としては強磁場を利用することができます。装置上流端にはイオン源が接続されており、最大で20 keV程度のエネルギーを持ったイオンビームを引き出すことが可能です。DT-ALPHA装置では体積再結合プラズマに対して高エネルギーのイオンビームを入射することで核融合炉ダイバータプラズマの模擬を行っています。加えて、核融合プラズマの加熱の役割を担う中性粒子ビーム入射加熱システムの高効率化を目指した研究も行っています。
DT-ALPHA装置の外観
DT-ALPHA装置では粒子的、分光的、波動的なプラズマ計測を行っています。プラズマの大きな特徴は荷電粒子の集合体であることです。そこで、プラズマ中に挿入した電極に流れる電流から電子やイオンの温度、密度や流れ。DT-ALPHA装置で生成されたプラズマは可視光を発します。そこで分光器を用いて、プラズマ発光のスペクトルを取得することで原子過程・分子過程の調査を行っています。また、プラズマ生成のために外部から印可する高周波により励起される波を計測するために磁気プローブを用いた計測も行っています。
2本の電極で構成されるダブルプローブ |
先端にピックアップコイルを有する磁気プローブ |
プラズマの流れの指向性を計測する |
プラズマ中のイオン温度を計測する |
プラズマからの発光をCCDで波長分散させ |
特定の波長の発光のみを透過させるフィルタと |
プラズマ中のイオン温度やエネルギーを計測するエネルギーアナライザー
ここではDT-ALPHA装置で得られた成果を簡単に紹介しています。
高周波プラズマではヘリコン波と呼ばれる波を励起することで高密度プラズマを生成することができます。左の図はプラズマの電子密度の印加電力依存性を示しています。Conf . IからConf. IIIでは装置内の磁場配位が異なっています。Conf. IとConf. IIでは電子密度は印加電力に対して緩やかな増加を示しますが、Conf. IIIでは電子密度の急激な増加が見られます。このような挙動はヘリコン波励起時の特徴的な変化です。ヘリコン波の励起をより検証するため、右の図のようにプラズマ中を伝搬する電磁波の分散関係との比較を行いました。高密度プラズマでは分散関係から予測される電子密度に近い値となっていることがわかりました。
プラズマの電子密度の印加電力依存性 |
プラズマ中を伝搬する電磁波の分散関係との比較 |
体積再結合過程を促進する為にはプラズマを高電子密度かつ低電子温度とする必要があります。DT-ALPHA装置では装置下流部にガスパフが可能な機構を有しており、供給した二次ガスとプラズマとの相互作用で体積再結合過程を誘起しています。左の図に示すのは低ガス圧力時と高ガス圧力時で得られる典型的なプラズマの発光スペクトルです。圧力が高くなると高い主量子数nからの発光が急激に大きくなっている事がわかります。これは体積再結合プラズマが生成されていることを示しています。発光スペクトルが変わるため、プラズマの色も違って見えます。
低ガス圧力時と高ガス圧力時における |
低ガス圧力時と高ガス圧力時における |
熱運動するプラズマは個別にランダムな運動をしますが、電場や磁場の影響で集団的な振る舞いも見せます。プラズマの流れを計測する手法として方向性ラングミュアプローブ(DLP)と呼ばれる方法が提案されています。左の図に示すのはDLPを用いて計測したイオンマッハ数の径方向分布です。円柱プラズマの中心部ではプラズマが静止し、外側に向かう程高速な速度で周方向に回転する流れが形成されていることが分かりました。右の図はDLPとプラズマをCMOSと呼ばれる素子で撮像した様子です。
方向性ラングミュアプローブで計測した |
CMOS素子で撮像したプラズマと |