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 素粒子・反粒子化学  環境放射化学  放射線化学



電子スピン共鳴法による放射線誘起ラジカルの研究

 放射線を物質に照射すると、分子がイオン化され、ラジカルが生まれます。ラジカルの中には、長期間物質中に保持されるものもあり、不対電子を持つので、電子スピン共鳴(Electron Spin Resonance)法によって高感度に検出可能です。 マイクロ波の吸収を磁場を掃引しながら測定し、スペクトルからどのようなラジカルが物質中に存在するのかを調べます。
 我々人間や動物の「歯」が放射線にさらされた際に生じるラジカルを測定することで、個人線量計として利用しようという研究が1970年代から行われています。 歯が放射線にさらされると、歯の表面を覆っているエナメル質(主成分:ヒドロキシアパタイト)に含まれる微量の不純物である炭酸イオンが、室温において百万年以上安定な炭酸イオンラジカルに変化します。 このラジカルの量を測ることで、行動履歴が不明な動物各個体の累積被ばく線量を決定することができます。


 当研究室では、福島第一原子力発電所事故の被災動物(サルやウシ)の歯を使い、歯中に含まれるラジカルを分析して、累積の被ばく量を評価しています。 放射線影響の調査で必要とされる、低線量領域では、炭酸ラジカルだけでなく、もともと歯中に含まれるラジカルの影響も無視できません。 試料の調製方法や測定条件、解析方法を研究し、実用的な線量測定法の確立を目指しています。




有機高分子固体の放射線劣化の研究

  ポリエチレンやポリプロピレンといった有機高分子材料は、レジ袋や不織布など我々の生活には欠かすことのできない材料であるだけでなく、原子炉内部のケーブルの被覆材や宇宙用の部材として利用されています。これらの有機高分子材料を放射線や宇宙線被ばく環境下においておくと、放射線による劣化が引き起こされ、材料や施設の健全性を脅かすことが問題とされています。
 当研究室では、学内外の放射線施設を利用して高分子材料に放射線を照射し、その化学構造や力学特性、あるいは自由体積空孔の変化を測定することで、高分子材料の放射線劣化を調べています。本研究テーマは、原子炉施設などの安全性・健全性の評価といった社会的な側面だけでなく、放射線の種類による線質効果といった基礎研究、あるいは材料の耐放射線性の研究や放射線を利用した新規材料創製などの材料研究まで、幅広い分野に知見を与えます。