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 素粒子・反粒子化学  環境放射化学  放射線化学



エキゾチック原子分子理論計算

  私たちの身の回りにある物質は、ほとんど電子・陽子・中性子から構成されていますが、物質の構成要素はこれだけではありません。「ミュオン(μ, μ+ )」のような素粒子や、 「陽電子(e+)」「反陽子(p)」などの"反粒子"も、寿命は短いのですが宇宙の中では常に生成・消滅を繰り返し一定量存在します。
  「エキゾチック="風変わりな"」原子分子とは、これらの素粒子や反粒子を含む原子分子系のことをさします。 当研究室では、こういった系の精密理論計算・予測をスーパーコンピュータを駆使し、行っています。
   特異な系の精密理論計算と実験との比較は、反陽子の質量や磁気能率、ミュオンの磁気能率などの粒子・反粒子の対称性の検証として、非常に重要な役割を担っています。 また、理論研究では未発見の粒子について様々な予言ができます。現在、大型加速器を用いて検証が試みられている超対称性理論に基づく超対称性粒子もその一つです。宇宙の始まりのビッグバンを巨大加速器になぞらえ、宇宙初期での合成された同位体組成の観測値との比較から超対称性粒子に予言を与えています。
ミュオニックヘリウム
  負の電荷を持つミュオンは、電子の約207倍の質量を持ち、マイナス1の電荷を持つ素粒子です。 この粒子がヘリウムイオンに結合すると、質量の大きさから、きわめて核近傍に存在確率を持ち、通常のヘリウムとは全く異なる様相を示します。
  また、ミュオンは水素同位体とミュオン分子を形成すると、核間距離は水素分子の200分の1となり、ミュオン分子内で核融合反応を起こします。この現象はミュオン触媒核融合と言われ、エネルギー生産や中性子源として期待され、精密な理論計算が重要な役割を果たしています。
ポジトロニック原子/分子
  「陽電子(positron)」は、電子の反粒子であり、電荷が反対である以外は、 電子と同じ性質を示します。 陽電子は原子や分子に束縛されることがあり、電子と対になって、電子雲ならぬ中性粒子(ポジトロニウム)雲を形成します。陽電子は質量が軽い分、量子効果も大きく、このような不思議な振る舞い示します。
  このような低エネルギー束縛系では、様々な量子効果の発現が期待されますが、実験的にはまだ作り出せていない系もあり、理論研究がホットな系でもあります。



ミュオンビーム実験

  ミュオンを加速器で発生させ、これを物質に入射すると、様々な原子・分子現象が起こります。 特に、ミュオンが二つの水素原子核を結合し、ミュオン分子(H2+の電子を200倍重いミュオンに置き換えた系)を作ると、トンネル効果によって分子内核融合が起こります。 この現象はミュオン触媒核融合と呼ばれています。理論・実験の両面から、ミュオン触媒核融合の素過程を解明し、学内外の研究者と協力して新たな応用分野(核融合発電、中性子ビーム、ミュオンビーム冷却など)の創出に向けた研究を進めています。





陽電子実験

  当研究室では、陽電子という素粒子(電子の反粒子)を実験対象として扱うことができます。これは放射性核種がβ+壊変する放射性核種を利用して陽電子を得る事が出来ます。陽電子は、電子と接触すると対消滅し、高エネルギーの光子(ガンマ線)を放出します。 この消滅光子は、消滅する相手電子の電子状態に敏感に反応します。対消滅速度から電子密度や陽電子・電子相関、消滅光子のドップラー拡がりから電子や陽電子の運動量が分かり、気相から固相までの物質内のミクロな構造の解明の手がかりとなります。

陽電子-原子分子相互作用の研究
  原子分子内の軌道電子の運動エネルギーと同程度かそれ以下のエネルギーをもつ陽電子は、原子分子と多彩な反応を示します。気相中での陽電子寿命とドップラー拡がりを同時に観測する事により、陽電子散乱のダイナミクスを明らかにします。量子効果の強いこの系では、古典力学では予測もつかない奇妙な現象の発見を目指し、量子力学的多体散乱問題の解明を理論と協力して進めます。

陽電子寿命測定法による材料研究
  陽電子寿命測定は物質内の微小構造を非破壊で測定できる非常に優れた手法です。 陽電子線源から入射した陽電子が物質内で消滅するまでの時間を計測し、物質内での陽電子寿命を得ます。 例えば、高分子材料中に存在するサブナノメートルサイズの空孔があれば、寿命が大きく変化します。物質内のサブナノサイズの構造の測定は陽電子寿命測定法の独擅場になっています。この他にも、物質内の相変化に伴うミクロ構造の研究などにも取組んでいます。