Project


1. SolarEVシティー構想

私たちの研究室は、都市の持続可能なエネルギーシステムの実現を目指し、革新的なプロジェクト「SolarEV City Concept」に取り組んでいます。このコンセプトは、都市の屋根に設置されたソーラーパネルと電気自動車(EV)を統合することで、エネルギーの効率的な利用とCO2排出量の削減を図るものです。具体的には、都市の屋根の70%をソーラーパネルで覆い、すべての車をEVに置き換えることで、都市の電力需要の53-95%を2030年までにカバーすることを目指しています。このシステムは、日中に生成された余剰電力をEVに蓄電し、夜間や曇りの日にはその電力を家庭やビルに供給することで、エネルギーの安定供給を実現します。

このプロジェクトは、特に日本の都市環境において大きな効果が期待されており、政府の支援と政策の導入が実現の鍵となります。私たちは、政策立案者、コミュニティ、産業界、研究者が一体となって協力し、技術的および社会的な障害を克服することを目指しています。SolarEV City Conceptは、クリーンエネルギーの利用と都市の持続可能性を両立させるための有望なアプローチです。私たちの研究室では、このプロジェクトを通じて、より良い未来の実現に向けた貢献を続けていきます。

  • 京都市における屋根上太陽光発電と電力需要のメッシュ分析とメッシュ間エネルギーフローの解析を行っています。太陽光発電による発電の変動をEVをバッテリーとして活用するV2Hシステムで吸収し、都市の中で郊外と中心地での発電量の差を解消するため、都市を1kmメッシュで区切り、メッシュ間の電力送電が可能な場合の都市の電力供給率を計算します。
  • 日本全国を対象に充放電量などの実測データを収集し、様々な条件下におけるV2Hシステムの課題を解析。システム導入による住宅のCO2排出量や電力自給率の変化を将来的な市場拡大やコスト下落を加味して分析し、効率的な導入モデルを明らかにします。
  • 2022年9月: 「SolarEVシティ構想の可能性、ベース設計資料」No.191、P37-39(PDF
  • 2021年12月: 「戸建て住宅における屋根上太陽光発電(PV)+電気自動車(EV)の脱炭素化ポテンシャルが急激に高まる」(プレスリリース
  • 2021年6月: ワールドビジネスサテライト(WBS)特集で報道。その後、CNBC Asia Channel Japanで放映、YouTubeに掲載
  • 2021年1月14日: 「屋根上太陽光発電(PV)と電気自動車(EV)を用いた新たな都市の電力・モビリティーシステムの可能性:『SolarEVシティー』コンセプト」(プレスリリース
  • 2020年4月: 「2030年に向けてEVを屋根上PVと組み合わせて蓄電池として使用した際の家庭の経済性と脱炭素化に関して」(CGERニュース

2. Global SolarEV Cityプロジェクト

日本、米国、韓国、中国、インドネシア、オーストラリア、フランスの研究者と共に、世界の都市におけるSolarEVシティーの可能性を研究しています。太陽光発電とEVによる脱炭素化のポテンシャルは、気候、都市の形状、文化、経済、電力システムによって異なるため、様々な角度から分析し、持続可能な都市の在り方を探求しています。

  • 2023年: 中国、インドネシア、フランスの都市の研究論文をそれぞれ発表。
  • 2022年9月15日: ソウル大学校知能生態科学研究科と部局間協定締結。Kang准教授らと共同研究を推進
  • 2022年6月3日: 韓国の都市の分析プロジェクト(プレスリリース

3. 京都未来門プロジェクト

京都から日本の脱炭素化を加速させるため、研究者、NGO、京都市、企業、宗教団体が協力し、SolarEVシティーの実装を目指したアクションリサーチを行っています。都市の1kmメッシュでの脱炭素化ポテンシャルの評価手法の確立、カーボンニュートラルに向けた都市のトランジッション研究、PVとEVを使った分散型電源の実証試験の計画策定を行っています。

  • 2024年11月: 京都トランジッションと京都未来門会議の論文を発表。
  • 2024年7-11月: 京都未来門フュチャーデザインを開催
  • 2023年 京都未来門会議
  • 2022年 京都未来門会議
  • 2021年10月: 書籍「都市の脱炭素化」を大河出版から発売(アマゾン)。各章の著者によるウェビナーシリーズを開催
  • 2020年6月: 京都における屋根上PVと蓄電池、EVを活用した脱炭素化の論文をApplied Energyに発表(ページ

4. インドネシア脱炭素プロジェクト

●インドネシアの脱炭素化を進めるため、アジア開発銀行と協力して屋根上PVとEVを活用した実証事業のスコーピング調査を実施します。

●2023年のインドネシアの環境林業省(KLHK)の報告書によると、エネルギー部門は国内の温室効果ガス(GHG)排出量の約59%を占める。2060年までにNZEを達成するため、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を加速する必要がある。インドネシアには208GWの太陽光発電ポテンシャルがあり、2014年の国家エネルギー政策(KEN)では発電の23%を2025年までに再生可能エネルギーとする目標が定められているが、設置済みの太陽光発電容量は1GW未満。本研究では、インドネシアが2060年までに太陽光発電とEVを活用してNZEを達成するための発展経路を研究し、屋根上太陽光発電の地域特性や経済性を明らかにします。

5. PV + EV+H2プロジェクト(FREI)

本プロジェクトは、福島浜通り地域などにおける創造的復興とカーボンニュートラルの実現を目指し、水素および再生可能エネルギーを基盤とした地域エネルギーネットワークのモデル研究に取り組んでいます。水素の製造・貯蔵・輸送・利用技術の高度化や、エネルギー需給最適化技術の開発・実証を通じて、脱炭素かつレジリエントな次世代スマートシティモデルを創出し、東北地域から日本全国へと展開することで、持続可能なエネルギーシステムの確立に寄与することを目指しています。2024年度は、浪江町を対象に、水素および再生可能エネルギーの地産地消を核とする地域エネルギーシステムの高度化に取り組んでいます。具体的には、BEMS・HEMSなどから得られる実測データに基づき、ランダムフォレストを用いた時間別エネルギー需要予測モデルの構築、および道路交通調査データに基づくEV充放電・走行需要の高精度推定を進めています。これらの成果をPLEXOSによる最適化モデルへ統合し、EVおよび水素利用が地域電力・エネルギー需給バランスの向上や再生可能エネルギーの変動性の緩和、ひいては脱炭素かつレジリエントな地域社会の実現にどの程度寄与するかを評価しています。今後は、研究対象を福島浜通り地域、東北地域、さらには日本全国へと拡大し、多様なシナリオ下での技術的・経済的評価を通じて、カーボンニュートラル社会実現に資する次世代スマートシティモデルの構築を目指します。

6. 中国脱炭素プロジェクト

●中国の都市および農村開発におけるさまざまな建物タイプに対するPV+EVを使った脱炭素の経路を研究します。

7. 風力発電プロジェクト

●2025年を見据えた都市の脱炭素化に関する研究を行い、未来を描きながら現状において経済的に脱炭素化に取り組む方法を計算。北海道EEZまでの海域における風速、水深、離岸距離などのデータを用いて、洋上風力発電が発展できる場所にウィンドファームを設計し、発電の最大ポテンシャルを算出。SAMを使用して経済効果をシミュレーションし、北海道の電気ネットワークを構築し、洋上風力電気の最も経済的な配電方法をシミュレーションを行います。

8. その他プロジェクト

●仙台市、東北大学のカーボンニュートラル研究を開始。研究の最終ゴールは「自然システムの中で、人間社会がどのように持続可能な社会システムを構築すべきか」を明らかにします。

●2022年、2023年、2024年の後期ゼミ「先進社会環境学演習」にて、東北大学のカーボンニュートラル戦略作りを学生と共に実施しました。

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