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緑茶カテキンの自己免疫唾液腺炎発症に対する抑制効果

2021.06.21 note

シェーグレン症候群は,ドライマウスとドライアイを主徴とする自己免疫疾患である.スウェーデンの眼科医ヘンリック・シェーグレンによって初めて症例報告がなされてから約90年が経過している.しかし,発症機構ならびに治療法が未だに確立されておらず、日本では難病の指定である.この疾患の病因の一つに活性酸素が関係する事が明らかとなり,我々は現在シェーグレン症候群のモデルマウスであるMRL-Faslpr マウスを用い,抗酸化物質として知られているポリフェノール、緑茶カテキン(Epigallocatechin gallate: EGCG)の自己免疫唾液腺炎に対する抑制効果について調べている [1] [2].

今回の研究で,EGCGをMRL-Faslpr マウスに投与したところ,自己免疫唾液腺炎の発症が抑制された(図1).また唾液分泌を促進するAquaporin 5の顎下腺・線細胞apical plasma membraneにおける発現が増大した(図2).米国では,緑茶カテキンの錠剤がMigh TeaFlow®という商品名でドライマウスの治療用に販売されている.この錠剤を使用した30人のドライマウスの患者(シェーグレン症候群の患者7名を含む)の治療効果に関して,プラセボを服用した患者に比較して唾液分泌量の増加がみられた [3].またNIHのClinicalTrials.gov に”Green Tea Lozenges for the Management of Dry Mouth” (NCT01647737)として,Migh TeaFlow®のドライマウスに対する治療効果が掲載されている.なお,今回使用したMRL-Faslprマウスは,第19染色体上のFasをコードする遺伝子であるlymphoproliferation(lpr)遺伝子に変異を持っている.この遺伝子の変異は,リンパ球の細胞分裂とアポトーシスの阻害を促進し,自己抗体産生の増大(dsDNA, Sm, RF, ANCAなど)と高ガンマグロブリン血症を誘発して,糸球体腎炎,関節炎,唾液腺炎,血管炎などの自己免疫疾患を発症させると考えられている.

東北大学歯学研究科歯学イノベーションリエゾンセンター・助教 齋藤恵一

東北大学病院・講師 森 士朗

東北大学大学院医工学研究科・教授 小玉 哲也

参考文献
[1] K. Saito, S. Mori, F. Date, M. Ono, Epigalocatechin gallate inhibits oxidative stress-induced DNA damage and apoptosis in MRL-Faslpr mice with autoimmune sialadenitis via upregulation of heme oxygenase-1 and Bcl-2, Autoimmunity 47 (2014) 13-22.
[2] K. Saito, S. Mori, F. Date, G. Hong, Epigallocatechin gallate stimulates the neuroreactive salivary secretomotor system in autoimmune sialadenitis of MRL-Faslpr mice via activation of cAMP-dependent protein kinase A and inactivation of nuclear factor κB, Autoimmunity 48 (2015) 379-388.
[3] SS De Rossi, J Thoppay, DP Dickinson, S Looney, M Stuart, KUE Ogbureke, S Hsu, A phase II clinical trial of a natural formulation containing tea catechins for xerostomia, Oral Surg Oral Med Oral Path Oral Radiol 118 (2014) 447-454.