2007年度の記録です。

音楽の普遍性と多様性(2007年度)

基礎ゼミの授業概要(シラバス)

集中講義形式 担当教員:本堂 毅 所属:理学研究科

1. 授業題目

音楽の普遍性と多様性

2. 授業の目的と概要

音楽は世界共通語と呼ばれ,国籍や言葉の違いを越えて感情や思想 を伝えることが出来る.その一方,音楽には様々な形態があり,時代 や民族による違いも大きい.音楽の普遍性の基礎には,自然法則の普遍性があり,多様性の基礎には,人間の価値判断の個性がある.

このゼミでは音楽に潜む普遍性と多様性の基礎を理解し,文化を理 解する上での自然科学の重要性と限界,市民社会におけるコミュニケーションのあり方などを考える.

3. 学習の到達目標

4. 授業の内容・方法と進度予定

(1)音楽の基礎となる音階や音色が,どのような自然法則から生まれて くるのか,実際に楽器を用いた実験を行い議論する.

用意してある楽器
クラシックギター,ヴァイオリン,電子ピアノ,トロンボーン,ボンゴ,他
利用できる装置
オシロスコープ,スピーカー,発振器(信号発生器)など
場所
川内学生実験棟3階 音響実験室

(2)音楽の多様性がどのように生まれてきたのか? (1)の知見を基礎にして,自ら調べて発表する.

(3)第一線の音楽家を招いてワークショップを行い,参加者間で議論をして実際に音楽を創作する.

(4)創作のプロセスを考察し、曲を発表する。他人とコミュニケーションを行う際には,普遍性を共有し,互いの個性 (多様性)を尊重することが必要である.音楽創作ワークショップの中で,共同で創作するプロセスを体験し,コミュニケーション能力を磨くとともに,創作の醍醐味を体験する.

5.成績評価方法

出席状況、レポート,ワークショップでの創作に対する成績に基づいて評価する。

6. 教科書および参考書

必要に応じて随時参考書等を紹介する.

その他

第一線の音楽家(日本フィルハーモニー交響楽団,トロンボーン奏者,伊波睦氏を予定)の協力を得て実習(ワークショップ)を行う予定である. そのため,定員は10名とする.音楽や科学に関する特別な知識,能力は必要ないが,中学校(義務教育)終了程度の音楽の知識は前提とする. 授業への積極的な参加、取り組みを期待する。

初回授業:4月16日(月)3講時、川内北キャンパス 4月〜7月の間に,体験学習を含めて数回授業を行い,集中講義を夏休み, に行う予定である(現在,特別講師と日程調整中.7月までの土日になる可能性も あり.判明後すぐに掲載予定).

5月24日(集中講義1)  第一級のオーケストラがどのような技術的作業や,音楽家同士の相互コミュ ニケーションによって響きや音楽を作り上げているか,練習の現場(ゲネプロ) 〜本番と通して見学し,オーケストラ団員に直接会い,取材する. (協力: 日本フィルハーモニー交響楽団)

注意)  夏休み期間に集中講義を合宿形式(1泊2日)で行う場合,宿泊費及び食費が 必要となる (交通費は大学が負担).また,5月24日の集中講義1では,入場料 負担(3,500円)が必要となる.

参考

2006年度,理学研究科で開催の音楽創作ワークショップ(理学研究科広報室のページ)

大学でワークショップを取り上げた理由のインタビュー(理学研究科広報室のページ)

参考図書

書籍名
著者
出版社
出版年
1
「音楽の科学:音楽の物理学・精神物理学入門」
原題: The Physics and Psychophysics of Music: An Introduction}
原著:Springer Verlag; 3rd edition
ローダラー(Juan G. Roederer)著,高野光司,安藤四一訳
音楽之友社
1995
アメリカの高名な地球物理学者による,洞察力あふれた名書.
2
「絶対音感」 
芥川也寸志
(岩波新書)岩波書店
1971
世の中には,絶対音感を持った人たちがいる.なぜ彼ら(彼女ら)が絶対音感を持っているのか? 絶対音感は教育で身に付くのか? 絶対音感を持っている人たちに聞こえる音は,普通の(絶対音感を持たない)人とどのように違うのか? 絶対音感を持つことは幸福なのか?
絶対音感を持つ音楽家へのインタビューなどを元に,著者の綿密な取材によって書かれた,知的好奇心溢れるノンフィクション作品(ベストセラー).
3
「音楽の基礎」
藤垣裕子・廣野喜幸(編)
東京大学出版会
2008
この本には,いわゆる「楽典」の域を超え,音楽の生じてきた自然科学的背景についての考察を見ることが出来る.作者は,仙台フィルの音楽総監督も務めた,20世紀の代表的作曲家.
4
「響きの考古学--音律の世界史」 
藤枝守
音楽之友社
1998
自然音階(純正調)と平均率の比較等,世界の音楽に亘った詳しい議論がある.
5
「フーリエの冒険」
トランスナショナル カレッジ オブ レックス編
ヒッポファミリークラブ
1988
「波(音)は複数の単純な波(振動モード)の重ね合わせである・・・」.フーリエが発見したこの普遍的性質を 理解し,言語音声を解析しようとした文系の大学生たちが,いつしか「フーリエ」の魅力溢れる世界に引きずり込まれた記録.限りなく「直感的」に科学を理解しようとした奮闘記.
6
「楽典」(3訂版)
黒沢隆朝
音楽之友社
1987
いわゆる「楽典」ではあるが,音階成立の起源についての,音楽学者からの興味深い議論がある. すぐれた教科書であるが,現在版元品切れである(著名な教科書なので,古書の入手は比較的容易).
7
「音楽と認知」(認知科学選書12)
波多野誼余夫(編集)
東北大学出版会
1987
認知科学の立場から,音楽が人間に理解されるメカニズム(認知プロセス)を論じた書.
8
「患者は何でも知っている:EBM時代の医師と患者」
.A. ミュア・グレイ(著)斉尾 武郎(翻訳)
(EBMライブラリー)中山書店
2004
科学の普遍性と多様性について,医学の立場から考えた著作. 
9
「科学の哲学」
野家 啓一(著)
放送大学教育振興会
2004
科学と社会の関係について,哲学の立場から考察した書.
参考

2010年度の基礎ゼミ(法と科学の接点):http://web.sci.tohoku.ac.jp/hondou/archives/kiso2010.html

2011年度の基礎ゼミ(音楽の普遍性と多様性 ):http://web.sci.tohoku.ac.jp/hondou/2-2kiso.html