シリーズ 青葉山 90  クジャクチョウ 


 


間から薄日が差し込む林。

一匹のチョウが止まった。ニワトコ*の赤い実は、前夜の雨にぬれている。

羽を広げると、国内でも屈指の美しさだ。学名も「ゲイシャ」と呼ばれるクジャクチョウは、花の蜜を探して飛び回る。
グロテスクな幼虫は、これからサナギになり、華麗に"変身"する。

右下はサナギから羽化した直後。裏側が黒かっ色の羽は、まだぬれて縮んでいる。飛び立つまではあと少しだ。

タテハチョウ科。翅開張約5.5cm。

 
(河北新報社提供 初出 1991.6.21)

 


クジャクチョウ
Inachis io Linnaeus ssp. geisha Stichel
タテハチョウ科

クジャクチョウの話になると必ず「ゲイシャ」が話題にのぼります。このチョウはユーラシア大陸の北部に非常に広く分布し、日本はその分布の東端に当たっていて、正確には日本産亜種の亜種名が "geisha" です。関東以西では高原チョウの印象の強い種ですが、東北地方では平地に見られます。

仙台周辺での食草は主にカラハナソウと思われます。これをたよりにすると幼虫を探し出すことができるかもしれません。成虫は開けた場所を好み、花もよく訪れます。夏の山道で翅を広げてとまっているのを見かけますが、警戒心が強くなかなか近寄らせてくれません。成虫越冬をするので、成虫の姿は冬まで見ることができます。

* ニワトコの花 → (青葉山72) ニワトコ
 カラハナソウ → (青葉山191) カラハナソウ