シリーズ 青葉山 89  ニッコウキスゲ 


 

 
夜のひと降りで、林の草木の葉は、雨露の宝石で着飾った。しっとり濡れた地面は、踏み出した足にやさしくこたえてくれる。

緑一色の中に、鮮やかな橙(とう)黄色の花を見つけた。ニッコウキスゲだ。まっすぐ60cmほど伸びた花茎の先に、らっぱ形の花をつけている。花は、今朝開いたものだろう。ニッコウキスゲは、朝開いた花が夕方にはしぼんで終わる「一日花」だ。

尾瀬などの群落が有名なために高山植物と思われがちだが、北上するにしたがって、気温の関係で、それより低い青葉山でも見られる。

 
(河北新報社提供 初出 1991.6.19)

 

ニッコウキスゲ(ゼンテイカ)
Hemerocallis dumortieri Morr.
var. esculenta (Koidz.) Kitam.
ユリ科

竜ノ口側のモミ−コナラ林の林床などの湿地、湿った林縁や草地にややふつう。

今年は雪が少なく春から季節の進みが早かったため、ニッコウキスゲの活動開始時期も早く、平年より早めに開花しています。

ところが八甲田植物実験所からの報告によれば、八甲田の湿原ではその後の遅霜のために生育途上のつぼみの多くが痛んでしまい、今年はニッコウキスゲのお花畑はあまり期待できない、とのことでした。(1998.6.17記)