シリーズ 青葉山 7  モミジイチゴ 


 

 

ミやアカマツの林を抜けると、周囲が急に明るくなった。ホオノキやコナラの落ち葉を踏んで緩やかな坂を上る。道端に、モミジイチゴが生えていた。一定間隔で枝に付いた冬芽。枝先には一枚の葉が残っている。くすんだ赤い色の葉は、もう、とっくに光合成を済ませたはずなのに、落葉していない*。冬の重く冷たい風が、吹いてきた。小さな葉に触れると、それは、あっという間に谷に消えた。枝はすっかり裸になった。

春-。芽吹き。そして、小さな白色の花が咲いたら、またここに来ることにしよう**。

(河北新報社提供 初出 1991.1.29)


モミジイチゴ
Rubus palmatus Thunb. ex Murray
var. coptophyllus A.Gray
バラ科
落葉低木。沢道などの路傍や林縁にふつう。

* 葉の中にまだ窒素(ちっそ)が残っているのでしょうか。植物にとって窒素は貴重な資源であり、枯葉にして捨てるくらいなら体内に回収します。窒素(光合成系のタンパク質)が減少すると、その葉は光合成ができなくなります。
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