シリーズ 青葉山 8  ニホンリス 


 

 

 

葉樹と落葉樹の交じり合った早朝の林*を歩く。高さ30mはある赤松の巨木の上から、細かい樹皮が落ちてきた。仰ぎ見た先に動く小さな影、ニホンリス**だ。枝を渡り、逆さまになって幹を下り、また上る。別名「木ネズミ」と形容されるにふさわしい俊敏な動きだ。リスはえさ不足の冬に備えて、クルミやドングリなどの木の実を秋の間、樹洞や根元に隠しておく「貯食」という習性がある。雪がやんだ日など、小さな足で雪をかき分け、隠しておいた木の実を持ち去った跡を見かけることがある***。体長約20cm、尾長は約16cm。

(河北新報社提供 初出 1991.1.30)


ニホンリス
Sciurus lis
リス科

本州・四国に生息。平地から低山地に生活します。植物園内での生息個体数は多くはありませんが、沢道周辺で見かけることがあります。冬に葉が落ちて見晴らしがよくなった林内で、枝から枝へ渡る姿が観察されます。クルミやドングリを好み、丈夫な前歯で器用にこじあけて食べます。近年、ペットとして飼われているチョウセンシマリスが野生化し、本州でも見かけるようになりました。
 

* ニホンリスは樹皮や枝で、鳥のような巣をつくります。針葉樹林では巣をつくる材料がとれ、落葉樹林では食料がとれます。→参考 動物の衣食住 
** ホンドリスと呼ぶ場合もありますが、本ページではニホンリスという呼び方に統一します。
*** 一個一個別の場所に隠すようです。リスは隠した場所の一部を忘れてしまい、そうして生き残った植物の実が発芽・成長して、分布を広げることになります。