シリーズ 青葉山 5  ヤブムラサキ 


 
、黄、黒など、自然界にはさまざまな色の果実がある。その中で、ヤブムラサキの気品のある紫色の実はひと際目を引く*。

 

 

  顔を近づけてみると、短い毛に覆われた萼(がく)が、実を包み込むように守っている。冬の寒さに耐えかねたのか、もう既に実を落としてしまったものもある。


 

明け方降った雪もやんだ。うっすらと木々に積もった雪が、音もなく落ちてくる。静寂の森。カラの仲間が枝から枝へ、短く鳴き合いながら渡っていく。

しばらく歩くと、再びヤブムラサキが目にとまった。白い地上に落ちた実はけさのものだろうか。

(河北新報社提供 初出 1991.1.25)


ヤブムラサキ
Callicarpa mollis Sieb. et Zucc.
クマツヅラ科

  
落葉低木。園内全域の林縁や林内にふつう。

* 最も多いのは赤。紫は少数派で、他には近縁のムラサキシキブぐらいでしょうか。ムラサキシキブ属の属名(Callicarpa)は「美しい果実」を意味しています。

ヤブムラサキの花は6月頃(青葉山第97回)