シリーズ 青葉山 33  タネツケバナ 

 

当たりの良い湿地に、小さなタネツケバナが咲いていた。気付かずに踏み付けてしまいそうな白い花だ。時折吹きつける冷たい春の風も、ここには当たらない。

タネツケバナは、ほとんどが秋に発芽し、葉を出した状態で冬を越す。早いものは、三月にはもう開花して結実する*。地面に張り付くように広がった濃い緑の葉は、厳しい冬を耐えたあかしなのだろうか。

シジュウカラのさえずりも、だいぶうまくなってきた。鳥たちも"恋の季節"を迎えたようだ。

米の種モミを水に漬けるころ開花する。和名の由来だ。

 

(河北新報社提供 初出 1991.3.16)


タネツケバナ
Cardamine flexuosa With.
アブラナ科

園内全域の沢筋や路傍にふつう。越年草。

* 冬の寒さを通過し、春に日が長くなって来たのを感じると、花が開きます。仙台あたりでは、この通りですが、西南日本では秋にも咲いています。そこでは、個体が大きくなれば開花するようになっています。
 さく果にちょっとでも触れると、はじけて種子をまき散らします(自動散布)。この性質はタネツケバナ属の分類学上のキーにもなっています。

■ この写真はタネツケバナではなさそうです。理由は、タネツケバナなら、開花時期に茎がもっと伸びているはず、花がもっと小さいはず、葉がもっと薄いはずだからです。おそらくミチタネツケバナではないでしょうか。

ミチタネツケバナ(帰化) Cardamine hirsuta L.  記念館周辺や二の丸苗圃などの草地や路傍にふつう。

 とりあえず写真のそろった4種を見てみましょう。(しかし、なんともディジタル写真には向かない素材です)。