シリーズ 青葉山 164  オオバジャノヒゲ 


 

 

 
月中旬、花茎の先に黒紫色の実をつけ、綿帽子をかぶって震えていたオオバジャノヒゲ*。見上げた空には、葉をすっかり落とした落葉広葉樹の枝が寂しそうに鳴いていたっけ。

あれから八ヶ月。色づいた葉も散り始め、薄暗かった林も日ごとに明るくなってきた。

林床では、装いも新たなオオバジャノヒゲのエメラルドのような美しい実が、柔らかな秋の日差しに輝いている。

 

林を風が渡っていく。枯れ葉が乾いた音をたてて足元から逃げていった。

ユリ科の多年草。

(河北新報社提供 初出 1991.10.28)

オオバジャノヒゲ
Ophiopogon planiscapus Nakai
ユリ科
暗い林床にふつう。

園内ではモミ林の林床にたくさん生育しており、園路脇で観察できます。冬になりやがて濃青色に熟す実は果実のように見えますが、これは種子そのものです。果皮がたいへん薄く成長途上で破裂してしまい、その後種子は露出したまま成熟します。

 * → 二月のオオバジャノヒゲ(青葉山19)