シリーズ 青葉山 157  コシオガマ 


 

 

林縁では、他の木々に先駆けて、ヤマウルシの葉がほんのり赤く色づき始めた。紅葉を始めた木々を横目に、かれんなピンクいろの花を咲かせているのはコシオガマ。

「半寄生植物」で、他の植物の養分を譲り受けないと、一人では生きられない。十分な太陽光を期待できない、この季節ならではの苦肉の策と言えようか。そう言えば、太陽の軌道もだいぶ低くなった。

ツクバネやナンバンギセルのように、特定の寄生主は選ばない。こんなかわいい花に頼られた"幸せ者"はだれ?

ゴマノハグサ科の一年草。

(河北新報社提供 初出 1991.10.19)

コシオガマ
Phtheirospermum japonicum (Thunb. ex Murray) Kanitz
ゴマノハグサ科

園内での現状は不明(1961、1963年採集の標本はあります)。

仙台周辺ではそれほど珍しい植物ではありません。国内の「半寄生植物」の研究例は非常に少なく、寄生の実態についてはよくわかっていませんが、ゴマノハグサ科やヤドリギ科の半寄生植物は、一般に寄主から水分と無機養分だけを搾取していて、光合成産物まで取っているものはそれほど多くないようです。

コシオガマのような「半寄生性」は草原的な環境下で、水分や無機養分をめぐる地下部の競争の結果進化してきた形質の一つだと思われます。ゴマノハグサ科では、このような進化を遂げたものは非常に限られていて、半寄生性の成立はおそらく1回だけであったと考えられています。ただしこの半寄生性のグループの中から、何度も全寄生性のグループが進化していることがわかっており、現在は一般に別の科にされるハマウツボ科(ナンバンギセル(青葉山146)などの仲間)も、このゴマノハグサ科の半寄生性のグループの中から進化してきた一群であることがわかってきています。つまり全寄生性のハマウツボ科は、ゴマノハグサ科の中に完全に含められてしまうということになり、ハマウツボ科という名前を、図鑑から見なくなる日も遠くないかもしれません。