シリーズ 青葉山 10  アオキ 


 
当たりのよい南斜面。冷たい北西の季節風も、高いモミの樹冠を揺するだけでここまでは届かない。足元で芽吹いたばかりのアオキの双葉が、陽光に燃えている。

季節はずれとも思えるこの現象、果実を食べた野鳥が深くかかわっているらしい。普通、落下した果実の発芽率は極めて低いが、野鳥が媒介するとアップする。食べられた果実の種子が排せつされて露出するため、発芽率を高めるのだという*。

この若い生命が冬を乗り切り、今春さらに大きく葉を広げることを祈ろう。

(河北新報社提供 初出 1991.2.1)


3月末の親個体 

アオキ
Aucuba japonica Thunb.
ミズキ科
常緑低木。雌雄異株。モミ林の低木層で優占する他、暗い林内にふつう。

* アオキの実が鳥によく啄(ついば)まれるのは確かです。枝についている、あるいは地面に落ちている果実に、IIのような形やV字形の痕がよく残っています。アオキの種子が鳥に食べられ、糞から出てくることも確かです。しかし鳥に食べられなくても発芽はします。この種類は、一般に秋から冬に芽生え、一対の子葉をもった実生(みしょう)として冬を越しますから、とくに季節はずれとはいえません。食べられて、長距離を散布されることに意味があるのでしょう。本葉は春になってから出てきます。
 鳥に食べられた方が発芽率が高くなる植物は意外と少ないようです。明らかに高くなるものとしては、例えばガマズミがあります。