シリーズ 青葉山 11  ホクリクムヨウラン 


 
床に立ち枯れたホクリクムヨウランを見つけた。高さは30cmぐらいだろうか。葉を付けないことから「無葉蘭」と書くラン科のこの種は、他の植物と大きく違った特徴を持っている。

 

葉がないため、光合成による養分の自給ができない*。土中の腐った落葉の養分だけが、この植物の"栄養源"だ。葉緑素も生成されないため、茎や花にも色が付かないのだろう**

 

雲が去り、日差しが斜面を下りてきた。縦に裂けて空になった果実が浮かび上がる。造形美さえ感じる冬のムヨウランから、初夏、ひっそりと林床にたたずむ姿を想像するのは難しい***

(河北新報社提供 初出 1991.2.2)


ホクリクムヨウラン
Lecanorchis japonica Blume
var. hokurikuensis (Masam. T.) T. Hashim.
ラン科

 
北陸地方から東北地方南部に分布。緑の葉を持たない腐生植物。スダジイ・ウラジロガシなど常緑広葉樹林の林床に生育します。花は褐色。園内ではモミ林の林床に見られます。
* 葉がないというより、全体に葉緑素がないから、この植物では光合成ができません。他の植物で茎や果皮が緑色をしているのは、葉緑素が含まれているからであり、そこでも光合成をしています。
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根に共生(共棲)している菌類が落ち葉を分解して得た栄養を吸収して、生育する植物です。生育するには落葉落枝が供給され、土壌水分が安定に保たれる環境、つまりよく発達した森林が必要です。