新奇な巨視的量子物性の発見を目指して
強相関電子系では、しばしば対称性の破れやトポロジカル数で特徴づけられる量子秩序が生じ、巨視的なスケールで量子効果が発現します。超伝導・スピン液体・量子ホール効果は、その代表例です。本研究室の究極の目標は、これまでに知られていない新奇な量子物性を発見することです。その鍵となるのは「物質」であり、研究の柱に「新奇な強相関電子物質の創製」を据えています。
様々な固体化学的手法を駆使して、酸化物・窒化物・カルコゲナイド・ニクタイドなど広範な遷移金属化合物の純良試料を育成しています。超高圧合成法を用いた新物質探索も行っています。こうして得たバルク試料に対して、電気的・磁気的・熱的・光学的性質をラボベースで測定することで、量子物性の開拓を進めています。近年長足の進歩を遂げている共鳴X線散乱や中性子散乱など大型施設を利用した量子ビーム研究も積極的に推進しています。このような、物質合成を基盤に置いた総合的な研究を通して、磁性・超伝導・トポロジカル秩序などの新奇な量子物性を見出すことを目指しています。
研究トピックス
現在は、以下のテーマに関する研究を集中的に進めています。
- 鉄系超伝導体の物質開発および輸送現象・光物性の研究
- 奇パリティ多極子(電気八極子・磁気四極子など)秩序系の量子物性の研究
- スピン軌道相互作用の顕著な5d電子系における量子物性の研究
- 高圧合成法による新物質・新超伝導体探索
- 中性子散乱・共鳴X線散乱による構造物性研究
具体的な研究例を以下に示します。
- アンチポストペロブスカイト超伝導体の探索 (12-)
- BaMn2As2の電子物性 (11-)
- 梯子格子を有する鉄系超伝導体関連物質AFe2Se3の電子物性 (10-) → 詳細
- 共鳴X線散乱で調べたIrO2の軌道状態(10-12) → 詳細
- Sr2IrO4の超交換相互作用(10-12) → 詳細
- 反転対称性の破れた金属Pb2Ir2O7の電子・構造物性 (10-12) → 詳細
- パイロクロア型酸化物Cd2Os2O7の磁気秩序(09-11) → 詳細
- ポストペロブスカイト型酸化物CaIrO3の磁気・軌道秩序(08-12) → 詳細
- 鉄系超伝導体Ba1-xKx(Fe1-yCoy)2As2の電子相図 (09-10) → 詳細
- 鉄系超伝導体Ba1-xKxFe2As2のホール効果と特異な電子相の形成 (08-10) → 詳細
- 新超伝導体HgxReO3 の高圧合成 (07-10) → 詳細
- パイロクロア型酸化物A2Re2O7における極性金属状態 (06-09) → 詳細
- 新しいポストペロブスカイト型酸化物CaPtO3の合成 (05-06) → 詳細
- ポストペロブスカイト型酸化物Ca1-xNaxIrO3における金属絶縁体転移 (05-06) → 詳細
- オリビン型硫化物Mn2AS4における多重臨界現象 (04-05) → 詳細
- ”ポストスピネル”型酸化物CuRh2O4の高圧合成 (04)
- 異方的異常ホール効果と位相幾何学的異常 (00-04) → 詳細
- スピネル型クロム化合物の光物性 (00-04) → 詳細
- 平坦バンド強磁性体における量子ホール効果(99-00) → 詳細