量子情報・物性物理・時空物理の融合を目指す!

IoT・AI・スーパーコンピュータ・量子コンピュータなど,情報通信技術が益々発展する現在,基礎物理学や数理科学諸分野においても,エンタングルメント(量子もつれ)をはじめとした情報概念は分野を横断・革新する極めて重要なものとなっています.量子情報物理学分野では,量子情報論に基づいた理論物理学の再構築から量子多体系における量子もつれの観測・制御に関わる理論まで,広く量子の問題を理論的に取り扱っています.
物理学の分野は形成されておおよそ100年の成熟期間が経過するとパラダイムシフトを起こすのが歴史的事実です.20世紀初頭に形成された量子力学と相対性理論もその域に入ってきています.情報概念を通してそれらが新たな理論に統合されていく可能性が見えてきているのが近年の展開です.また逆に電子物性・量子コンピュータ・主成分解析・人工知能等の応用研究においても,その機能解明には量子物理の知見が必須となります.これら異分野融合性が我々の研究の泉源となっており,専門の異なる研究者との連携を密にしながら視点を広く持って研究を進めています.
以上のように,新たな分野が形成される胎動期に革新的・分野横断的な研究を進められることは非常に心躍ることです.このような挑戦的な研究を進めてみたい学生の皆様を歓迎いたします.

研究内容

エンタングルメントとホログラフィー原理について

本研究分野では,量子情報的概念と高次元的視点を活用して,物理学および数理科学の様々な難問題を見通しよく解決することを主たる目的としています.これを象徴するキーワードが「エンタングルメント」と「ホログラフィー原理」です.
エンタングルメント(量子もつれ)は,量子力学的粒子が非局所的に相関することであり,量子情報通信を実現するための最も基本的な状態のことです.それだけではなく,物性物理や統計物理において,多体量子系の波動関数や古典的秩序変数の定義できない量子相転移を効果的に表現・解析する方法でもあります.更に,時空物理においても,ブラックホールの熱力学や情報喪失問題とエンタングルメントの性質が非常に類似していることが知られています.
他方,ホログラフィー原理は,光学のホログラムに着想を得た造語で,あるバルクの理論がその境界では全く異なる理論に見えることを指しています.これを逆に物理の指導原理としようという機運が高まっています.これにより,複雑な物理系をより理解のしやすい物理系に等価に変換して解析するということが可能となります.この研究過程で,量子論と一般相対論という物理学の二大理論の相補的な関係性が見えてきました.
いずれの概念も従来の物理学の正攻法とは異なるように見えて,実は古くから興味の中心となる諸問題には少しずつ表れていました.これを体系化したいということが研究の狙いとなります.以下で述べる「特異値分解」「量子古典変換」「量子多体論」の研究では,いずれも「エンタングルメント」「ホログラフィー原理」の考え方が最大限活用されます.

特異値分解

「特異値分解」は,主成分解析・特徴抽出のアルゴリズムの一つとして,情報処理分野ではよく知られています.一方,物理の分野においても,この方法は量子多体系の「エンタングルメント(量子もつれ)」の精密な表現のために活用されてきた経緯があります.

量子古典変換

「量子古典変換(ホログラフィー原理,バルク・境界対応)」と呼ばれる概念を指導原理として,次世代物理の統合理論を構築しようという野心的な試みが素粒子論分野において推進されています.

量子多体論

物性物理学では,「量子多体問題」の解明は長年の大きな懸案課題です.ここで主題となるのは超伝導や磁性などの電子状態ですが,一電子近似が可能な半導体と異なり,それらは電子間の多体相互作用による新規な秩序から生じます.

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