研究内容
種分化に関する研究
ここではまず、島という特殊な環境で起きつつある種分化の例を挙げます。
東京からわずか南に伊豆諸島とよばれる島々があります。 これらの島では本州の植物と良く似ているけれども、いろいろな性質で異なる植物が分布していることが知られています。
これらの植物は島の環境に適応して、異なる性質を進化させていますが、島と本州とは地理的に隔離されているので、遺伝子のやりとりが起こらず、それらの違いは徐々に大きくなっていく可能性があります。
本州に広く分布するキキョウ科のホタルブクロは大きくて目立つ花をつけますが、伊豆諸島でも南端に近い八丈島ではその花はとても小さくなっています。 伊豆諸島のものは、シマホタルブクロとして別の種として認識されています。
これは、島では花粉を運ぶ昆虫が限られるため、昆虫の助けを借りなくても種子を作れるような仕組み(自家和合性)が進化したことと関係があると考えられます。
島ではこのような大陸とは異なった植物の進化がたくさん知られていますが、あまりに大きな違いがあると対応する植物が分からなかったり、なぜそのような違いが生じたのかを比較するのが難しかったりします。
伊豆諸島ではそれほどの違いがないという点で初期的な種分化を研究するのに向いているといえます。
また、河川の氾濫するような場所にはそのような環境に適応した植物(渓流沿い植物)が進化していることが知られています。
渓流沿い植物は河川が増水したときに水没するような場所に生育しているので、水流抵抗をできるだけ小さくするために近縁な種と比べて流線的な葉をもっています。
これも初期的な種分化の一例です。 このような例は決して少なくなく、植物の多様性が生じるメカニズムについて研究するのにとても適していると考えられます。
さらに植物では2つの種が交雑を起こした後、染色体が倍化することによって新しい種ができる現象(異質倍数体形成)が良く知られています。 そのようなメカニズムについても研究を行っています。