シリーズ 青葉山 82  フジ 


 


 
縁部を覆った緑のカーテンが、風に揺れている。

所々に固まって見える淡い紫色のプリント柄は花で、緑はもちろん葉。

 

花のつくりは、チョウに似た小さな花が房状に付いた総状花序と呼ばれるものだ。

 

 
カーテンを押し分けて林に入る。


ツルは他の植物を右巻き*に締め上げながら、勢力を伸ばしている。

 


左下の写真は今年2月に撮った果実。つい先日、足を運んだときには硬いさやが割れ、林床に飛び散った種子が既に発芽していた。
つる性落葉木。花の長さは70-80cmになる。

(河北新報社提供 初出 1991.5.25)


フジ
Wisteria floribunda (Willd.) DC.
マメ科

園内全域の林内、林縁にふつう。

*右巻き、左巻きの呼び方にはしばしば混乱があり、図鑑の記載も完全には統一されていません。上の写真のように、根元方向から見て反時計回り(左回り)に巻きながら成長している場合、「左巻き」とすることが多いようです。近畿以西の低山に自生する近縁種ヤマフジのつるは、フジとは逆の「右巻き」です。

フジのつるには形成層が何層もでき、それぞれが活動して別々の年輪をつくります(異常肥大成長)。これによりフジのつるは急速に成長できますが、その断面形は通常の樹木のような同心円でなく複雑な形になります。柔らかく腐りやすいこともあって、フジの樹齢を年輪から推定するのはたいへん困難です。

今年(98年)は季節の進みが早く、青葉山周辺でのフジの見頃は5月10日前後でした。