シリーズ 青葉山 79  コウゾ 


 

 
葉広葉樹林の緑のトンネルを歩く。吹き抜ける風がひんやりとして汗ばんだ肌に心地良い。

林を抜けたところでコウゾの木を見つけた。

 


果実のようにぶら下がっているのは雄花の集合花。近づいてみると、白い毛のような短い雄しべを出している。
雄花の上方に付いているのが雌花の集合花。淡いピンクの線状の1本1本が、すべて雌しべだ。

 
秋、濃いオレンジ色に完熟した果実は、肉食獣のホンドテンも食べるほか、野鳥たちにとっても貴重な「ビタミンC」の供給源となる。

樹皮は、和紙の原料にもなるクワ科の落葉低木*。

 
(河北新報社提供 初出 1991.5.22) 


ヒメコウゾ
Broussonetia kazinoki Sieb.
クワ科

中島池跡周辺などの林縁や明るい林内にふつう。

*和紙の原料として栽培されてきたのは、カジノキとヒメコウゾの雑種で、これが「コウゾ」と呼ばれます。栽培されていたものが野生化して人里近くに生育することもまれにはありますが、植物園ではヒメコウゾの自生だけが確認されているので、ここでは後者としました。

ややこしいことに、かつてはヒメコウゾのことを単にコウゾと呼んでいたこともありました。ヒメコウゾは雌雄同株でよく果実が実りますが、栽培系統の「コウゾ」はしばしば雌雄異株で、果実がほとんどできないことが多いようです。
ヒメコウゾからも繊維は取れますが、茎の太い「コウゾ」と較べると収量はかなり落ちます。