シリーズ 青葉山 68  ヤブレガサ 


 

 
"ピチャッ" という音とともに小川に飛び込む影、ヤマアカガエルだ。
気温の上昇とともに活発に動き出した。

沢沿いでの林床では、一見ユーモラスなヤブレガサの芽出しに"遭遇"した。大きい方でも、まだ高さは10cm程。名前の通り、まさに「破れた番傘」だ。夏を迎えると40cm程の円形状の"傘"の上に、白や薄紅色の筒状の花をいっぱいにつける。

樹上では、生まれ故郷に無事戻ってきた夏の渡り鳥たちが、にぎやかにさえずっている。あすからはバードウィーク。青葉の森は、最高のシーズンを迎える。

(河北新報社提供 初出 1991.5.9) 

 


ヤブレガサ
Syneilesis palmata (Thunb.) Maxim.
キク科

本州から九州にかけて分布し、青葉山一帯の半日陰地にも見られますが、1989-90年に行われた調査で園内に自生は確認されませんでした。

まさに折りたたんだ傘に見えるヤブレガサの若芽は山菜として食べることができます。多年草で、発芽後の数年間は毎年本葉を1枚だけつけます。数年たって大小2枚の本葉をつけるようになると開花し始めます。

また、ヤブレガサは発芽時の形態が特徴的なことでも知られています。キク科植物は発芽して最初に開く葉である子葉が2枚の双子葉類です。ところが、ヤブレガサは子葉が1枚しかありません。キク科植物の中で特異な存在です。