シリーズ 青葉山 60  ムラサキケマン 


 

 


線を伴う低気圧が東海上へ抜け、移動性高気圧が張り出してきた。それまで吹いていた東寄りの風も、北西へと向きを変えた。

しめった斜面を占領した赤紫色の花はムラサキケマン。長さ2cmにも満たない筒状の花弁が、横向きにたくさん付いている。風が吹くたび、柔らかい茎が波のように揺れる。

 
ケシ科に属するこの種は葉や茎を傷つけると、いやなにおいを発する毒性の植物。しかし、アゲハチョウ科のウスバシロチョウの幼虫にとっては、重要な食草となる。

自然界の不思議な"しくみ"は、身近な所でも見ることができる。

 

 
(河北新報社提供 初出 1991.4.26)
 


ムラサキケマン
Corydalis incisa (Thunb.) Pers.
ケシ科

火薬庫跡周辺などのやや湿った林縁や路傍にふつう。