シリーズ 青葉山 30  ガマズミ 

 

 

朝の林は留鳥たちのさえずりで明ける。ゆったりとしたヤマガラ*、やや早口のシジュウカラ**。みんなだいぶ上手になってきた。

 

尾根筋で高さ1m余りのガマズミの幼木を見つけた。ひげのように伸びたまま、枯れてしまった頂芽***。その両端には魚のうろこのような赤い芽鱗(がりん)に覆われた卵形の側芽が大きく膨らんでいる。葉が対生するこの種類、側芽が二つ仲良く並んだ姿は二卵性双生児のようだ。

 

ざらざらとした感触の枝を根元に向かってたどっていくと、昨年一年間で20cmも伸びているのが確認できた****。これから始まる双子の背比べ、どちらに軍配が上るのだろうか。

 

(河北新報社提供 初出 1991.3.13)


ガマズミ
Viburnum dilatatum Thunb. ex Murray
スイカズラ科

観察路入り口などの林縁や明るい林内にふつう。


* 
ヤマガラ
** 
シジュウカラ

*** おそらく昨年白い花が(そして赤い実が)ついた枝です。花を咲かせた枝はそこで終わり、腋芽(えきが)が伸びます。たいていは二つの腋芽が、ともに伸びますが、片方だけの場合もあります。花をつけずに枝が伸びていく時、腋芽の多くはそのままで残され、後に使われる年が来るまで待ち続けます。
**** 幼木ですから、まだよく伸びます。成長力は、むしろ盛んな分枝に振り向けられる種類です。よく分枝して、しなやかな枝は、山で刈った柴を束ねるのに使われました。

→秋の実