シリーズ 青葉山 184  ニホンキクガシラコウモリ 


 

 

 
没後間もなく、モミの樹洞*から"暗やみのハンター"が飛び立った。菊の花のようなひらひらしたひだ付きの鼻を持つ、ニホンキクガシラコウモリだ。

コウモリが暗やみで自由自在に飛び回るのは「超音波」を出すためだ。獲物や障害物からはね返ってくる超音波を、耳でとらえながら飛ぶ。他のコウモリは口から出すが、キクガシラコウモリは、その特徴ある鼻の穴から超音波を出す。

獲物の昆虫もすっかり姿を消した。寒さに備え体に脂肪を蓄えたコウモリは、間もなく冬眠を始める。

キクガシラコウモリ科。体長3.5-11cm。

(河北新報社提供 初出 1991.11.22)

ニホンキクガシラコウモリ
Rhinolophus ferrumequinum
キクガシラコウモリ科

キクガシラコウモリは典型的な洞窟性コウモリです。洞窟は休息、休眠、冬眠の場所として利用され、冬眠期のねぐら、活動期のねぐら、出産・子育て期のねぐらというように季節的に使い分けられているようです。エサは大型〜中型のガ、ゲンゴロウ、コガネムシなどの甲虫、セミ、アブなどで、昆虫の捕食者として森林生態系の中で重要な地位を占めています。

* 「樹洞」とはフクロウ、リス、ムササビなどが巣やねぐらとして利用しているような木にあいている穴のことです。樹洞を利用するコウモリは別にいるので、洞窟を利用するキクガシラコウモリにこの表現は正しくありません。植物園には亜炭採掘跡とみられる穴が多数のこっており、キクガシラコウモリにねぐらを提供しています。上の写真もその穴のひとつのようにみえます。 → 関連の記述

コウモリ類は、分布範囲が限られ個体群が細分化されていること、その環境が特に悪化していることなどから多数の種で絶滅が心配されています。環境庁が1998年6月に公表した新しい動物版レッドリスト(ほ乳類・鳥類)によると、絶滅のおそれがある日本のほ乳類47種のうち31種がコウモリ類です。