シリーズ 青葉山 142  ヤマハッカ 


 

 

 
風15号が東海上に去っていった。風向きも北東から西へと変わり、雲間からは久しぶりに太陽が顔を見せた。

 
初秋の光があふれる野山では、草花たちが一段と輝きを増した。コウゾリナの黄色、ヤマハギの赤紫色の花々が、溶け合うように風に揺れている。

足元で地味な花を見つけた。ヤマハッカだ。

高さは70cmほど。短い毛に覆われた四角い茎が3本に分岐している。


 
1cmにも満たない薄紫色の小さな花が数個ずつ固まって、何段にもついていた。

シソ科の多年草。ハッカの名がついているが、あの特有の香りはない。

(河北新報社提供 初出 1991.9.10)

ヤマハッカ
Rabdosia inflexa (Thunb. ex Murray) Hara
シソ科

現状不明(1958、1959年採集の標本があります)。

園内にはみられませんが、青葉山周辺では珍しくない花です。マメ科植物と同様に横向きに咲く左右相称の花(旗状花)をつけます。上部の花弁が立ち上がって広告の効果を持ち、下部の花弁が雄蕊・雌蕊を抱え込んでおり、この部分に虫が乗るなどして力がかかると、包み込まれていた雄蕊、雌蕊が飛び出してきます(実験してみるとおもしろいかもしれません)。こうして、訪花昆虫の体の下面に花粉をつける仕組みになっています。訪花昆虫はアブや小型のハチが多いようですが、仙台近郊ではマルハナバチの訪花も観察されます。