シリーズ 青葉山 14  ホンドテン 

↑クリックで大きく(64K) (C) Kahoku Shimpo.


木の上を、ホンドテンが渡って行った。午前3時、下弦の月がミズキの幼木を照らし、林の中に青白い光が差し込んでいる。白い顔。金色の見事な冬毛だ。


山地性で、樹上の小鳥やリス、ネズミなどを素早く捕らえる肉食獣。えさとなる小動物がいない森では、決して生きることができない。極めて自然に敏感で、警戒心の強い生き物だ。


数百メートル先にはビル街の明かりが見渡せ、街の騒音も聞きとれる丘陵。テンの生息が確認されたことは「手つかずの自然」が脅かされながらもまだ残っていることの何よりの証拠となる。

(河北新報社提供 初出 1991.2.6)


ホンドテン
Martes melampus melampus
イタチ科

シリーズ写真中の白眉。青葉山でテンの存在がはっきりと写真で確認されたのはこれが初めてでした。撮影日は91年1月の末。場所は植物園園路の入口から少し入った所です。食物連鎖の頂点に立つテンが住むということは、植物から昆虫、鳥、小動物、獣とつながる生態系のピラミッドが完成していることを示しています。青葉山の自然度の高さがわかります。テンは青葉山だけでなく、東北自動車道を越えた蕃山(ばんざん)など、西部の丘陵地帯まで広く活動している可能性があります。
 今(98年)も、植物園路にネズミなどの小動物を食べたらしい糞が落ちているので、生息は確実です。道のまん中に糞をするのは、なわばり宣言のためでしょう。テンの糞は展示室に展示してあります。モミジイチゴやニガイチゴなどの種子も含まれていました。