シリーズ 青葉山 121  ヘビトンボ 


 

 


 
暮れのように暗い雨の森を歩く。

沢の上にせり出した葉の裏でヘビトンボの成虫を見つけた。

 

それにしても奇妙な名前と形をした昆虫だ。他の昆虫に比べて長い胸をヘビのようにかま首を持ち上げ、飛ぶ姿はトンボに似ているからだという。


ヘビトンボの幼虫は約三年間、他の水生昆虫を食べながら水中で暮らし、毎年今ごろに羽化する。

成虫の命は約二週間。その間は、固形物を一切食べずに水だけを飲んで交尾相手を探す。葉の裏など水辺に産卵した雌は、強い臭気を放つ自らの体液で体を溶かし、卵を外敵から守るようにして死んでいく。ヘビトンボ科。体長約40mm。

 (河北新報社提供 初出 1991.8.12)

 

ヘビトンボ
Protohermes grandis Thunberg
ヘビトンボ

幼虫は、カワゲラなど他の水生昆虫を食べて生育し、餌の豊富な清流に好んで生息します。比較的きれいな川が街中まで流れ込んでいる仙台ではヘビトンボを普通に見ることができます。成虫は夜間灯火によく訪れるので、クーラーのない研究室に飛び込んできて一騒動というのも、夏の間には何度かあります。

名前はヘビトンボですが、トンボの仲間ではありません。トンボと違い、静止の時に左右の翅を折りたたむことができ(写真)、成虫に変態するときにサナギをつくります。幼虫は転石の多い渓流に生息し、孫太郎虫と呼ばれて子供の疳(かん)の薬として用いられました。釣り餌や食用にされることもあります。