シリーズ 青葉山 119  ハラビロトンボ 


 

 

 
陵地の湿地でたくさんのハラビロトンボが飛んでいた。雄特有の美しい青灰色の腹部が、久しぶりに顔を見せた太陽に輝いている。

縄張りをパトロール中の雄が突然素早い動きを見せた。

 

腹部をピンと反らせたかと思うと、一瞬のうちに交尾をした。


上になった雄は、腹端にある「付属器」で雌の頭を抑えつけている。

 

交尾期になると、ハラビロトンボの成熟した雄は連結した雌が受精しやすいように腹の尾部にある精子を胸近くの「腹盤」にあらかじめ移し替えるという面白い行動をとる*。

特に雌の腹の幅が広いのでこの名がついた。体長36mm。

 (河北新報社提供 初出 1991.8.9)

 

ハラビロトンボ
Lyriothemis pachygastra Selys
トンボ

飛翔力が小さいので、湿地から遠く離れたところで見ることはまれです。5月から8月ころ見られます。

* トンボが他の昆虫と大きく異なる点はその交尾の姿勢です。ハラビロトンボに限らず、トンボのオスは腹端にある生殖器の精子を腹部前部にある副交尾器に移し替えます。
 交尾の際にはオスとメスの体で、いびつなハート型をつくります。オスは腹端にある器官でメスの背面をつかみ、メス腹端の交尾器とオス腹部の副交尾器をくっつけて交尾します。