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東北大学 大学院理学研究科 物理学専攻 電子物理学講座

実験方法Experimental Techniques

広帯域電磁波計測


ナノ空間中にある 電子、プロトン、イオンのダイナミックス


周波数(振動数)と波長の関係
交流電場に対する応答 = 複素伝導率,複素誘電率


我々の実験グループでは、電気伝導現象を広い周波数領域で測定し、固体中の電子、プロトン伝導、および、水分子系の動的性質(ダイナミックス)を研究しています。時間的。空間的に変動する交流電場に対する応答を、種々の実験手法を組み合わせて計測することにより、複素伝導率、或いは複素誘電率を求めることができます。その周波数分散、温度変化、そして、磁場変化から、動的緩和現象、フェルミ順位近傍の低エネルギー励起、閉ざされた水のダイナミックス、そして、準1次元プロトン伝導性に関する知見を得ることができます。


自由水における水分子の応答


上段の左図は、自由水における誘電分散を示しています。10 GHz付近の大きな応答は、交流電場に対する水分子の集合体としての緩和現象によるもので、集団励起モードと呼ばれます。1 THz付近の変化は、水分子の回転モードによるものです。こうした応答は、ナノ空間に閉ざされた水分子系では、異なる振る舞いをみせます。上段の右図は、自由水における赤外域に観測される分子振動です。水分子の基準振動は、1600cm-1付近のOH変角振動と、3400cm-1付近のOH対称・反対称伸縮振動です。こうした分子振動は、水分子が置かれた環境に依存して変わります。つまり、分子振動の変化を捉えることにより、ナノ空間に閉ざされた水が置かれた環境を調べることができます。



計測機器の紹介


広帯域な電磁波計測は、一つの実験装置で行えるものではありません。それぞれの計測機器、或いは、計測法は限られた周波数帯域にしか適用できません。そうした計測手段の原理、そして、実際の装置系の構成は全く異なっています。したがって、広帯域をカバーするには、いろいろな実験テクニックを身につける必要があります。


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直流電気抵抗測定

低抵抗の試料に対して、四端子法により、直流電気抵抗を低温・強磁場の環境下で計測が行えます。また、リレー装置を使用すれば、同時に8個の試料を測定できます。

絶縁体で高抵抗の試料のときは、二端子法により、エレクトロメータを用いて測定します。


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低周波交流電気抵抗測定

2 MΩ以下の抵抗をもつ試料に対して、低周波の交流測定を行うときは、抵抗ブリッジを利用します。四端子法によりもので、高感度な計測が行えます。温度変化、磁場変化の計測は、LabViewを用いたプログラムにより自動的にデータを取得できます。


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低周波誘電率測定

基本的に絶縁体的な試料に対して、誘電率の実部と虚部を高感度で計測できます。200 kHz以下の周波数域が、計測可能である。ロックインアンプがゼロ出力になるようにキャパシタンスブリッジのスロットを調整します。そのときの電気容量の値は、スロット上部にあるパネルに表示されます。大変レトロな実験装置ですが、感度は抜群です。


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ラジオ波帯反射率・透過率測定

ベクトルネットワークアナライザにより、反射、または透過測定を行います。計測できる周波数領域は、300 kHz ~ 3 GHzです。反射測定は二端子法のため、絶縁体の誘電率を計測する場合はよいのですが、低抵抗の物質の場合、接触抵抗が問題になります。閉ざされた水の系を実験するために、透過セルを試作しています。使いこなすには、まず、スミスチャートを理解する必要があります。


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マイクロ波帯電気伝導率測定

空胴共振器摂動法(第5版 実験化学講座 7巻 93ページの解説を参照のこと)は、非接触な複素電気伝導率、そして、複素誘電率を測定する方法です。無酸素銅製の円筒形空胴共振器を主に用いています。試料配置により、高周波電場と高周波磁場に対する応答を区別することができます。空胴共振器の共鳴測定は、自作のスカラーシステムを用いています。日常的によく使う空胴共振器は、Xバンド帯ですが、周波数逓倍器により100 GHzまで拡張できます。


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テラヘルツ波帯電気伝導率測定

テラヘルツ時間領域分光法を利用して、テラヘルツ帯電気伝導率測定を行っています。この方法は、テラヘルツパルス波を試料に入射し、透過してきたテラヘルツ波の波形を時間分解計測する手法です。波形をフーリエ変換することで、各周波数ごとの振幅と位相が測定できるベクトル計測です。本装置により、I型クラスレート化合物において、ラットリングフォノンを直接捉えることに成功しています。


○○○○○○○○イメージ赤外分光スペクトル測定

フーリエ変換型赤外分光計に、カセグレイン顕微鏡を装備させ、微小な試料の顕微赤外分光が実験できます。また、液体ヘリウムフロー型の光学クライオスタット、および最高600 ℃まで昇温できる光学クライオスタットを保有しています。また、ガス加圧した状態で赤外スペクトルを計測できる加圧セルもあります。目下、各種閉ざされた水を有する系の赤外分光実験に威力を発揮しています。




低温・強磁場実験装置、その他の計測器

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顕微ラマン分光測定

ラマン分光スペクトルは、赤外分光実験と相補的に重要です。赤外活性は電気双極子モーメントの変化に関係しますが、ラマン活性は、電気分極率テンソルに関係します。結晶、或いは、分子の対称性で、群論的に理解できます。ラマン分光では、一般に水の応答は弱いため、ナノチャンネルを形成する骨格分子の影響を調べる上で重要といえます。また、プロトン伝導のキャリヤーであるプロトン水和物の形成を観測するためにも有用かもしれません。


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超伝導磁石とクライオスタット

最高磁場 8 Tと14 Tの超伝導磁石を所有しており、これらを自作したヘリウム4クライオスタット(最低温度 1.4 K),或いは、ヘリウム3クライオスタット(最低温度 0.4 K)と組み合わせます。こうしたクライオスタットは、自作したガスハンドリングシステムのバルブ操作を正確に行うことで冷却することができます。実験に応じたインサートを、クライオスタットに挿入することで、各種実験に対応できます。

磁場が必要でなく、1.5 K以上で実験すればよいときは、ガラスデュワーと、それ専用のクライオスタットを利用します。また、液体ヘリウムを必要としないクライオ式冷凍機で冷却をすることもできます。


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試料準備に関係する実験機器

・最低0.1 μgまで計測できる電子天秤
・試料研磨のための機器
・金蒸着装置
・端子付け用光学顕微鏡
・電気炉
・DNA試料調整のための各種生化学関連機器
・湿度調節の機構

  など



高周波伝導率測定用プローバーの開発

・微小試料の電気伝導率測定
・高周波計測のための同軸針を装備
・LCRメータ、インピーダンスアナライザと接続して使用










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