2023年度研究室配属に向けて

笠田が2017年10月に着任して以来、5年が過ぎました(5周年記念作業着を作りました)。この間、スタッフとしては既に二人の助教が他大学に異動しおりますが、彼らとの共同研究は続いており、笠田に加えて現在の近藤准教授、余助教、荻野助教だけには留まらない研究者ネットワークを構築しております。この間、2名の留学生が博士号を取得し、それぞれ帰国して原子力研究機関や半導体企業にて勤務しております。また、博士前期二年の課程(修士)修了者も既に10名(うち留学生7名)を数え、そのうち5名(うち留学生3名)が博士後期課程に進学しております。このように、笠田研所属の学生の特徴として博士後期課程進学率が日本人と留学生を問わず5割に達していることが挙げられます。また、修士で学業を終えて世に出た学生の多くも国際雑誌に第一著者として論文を出版しており、基本的に研究志向が高い、あるいは配属後に高くなった学生が多いと言えます。2023年4月段階では、当研究室には博士課程後期の学生が6名(社会人1名含む)、博士課程前期の学生が8名、学部4年生が2名が所属することとなり、金研においても比較的大所帯の研究室となっています(とはいえ金研の充実した面積のお陰で、密を避けた居室環境を維持できております。)。

当研究室では、原子力や核融合炉のような極限環境下で用いられる構造・機能材料の創製と先進評価・分析手法を駆使した耐環境性発現機構の解明を目指した研究を進めています。原子力、核融合炉、加速器のような量子サイエンス分野における科学技術を基軸としつつ、新しい材料を自ら開発したり、未知の物性を明らかにしていくような材料工学研究を進めています。粉末冶金法による独自の酸化物分散超合金の開発、SiCや高融点ホウ化物等のセラミックス材料の開発において、特徴的な成果を挙げるとともに、超微小試験技術と呼んでいるマイクロメートルサイズの試験片を用いた力学特性評価法や、X線分光法などを駆使して、高エネルギー環境で耐えうる材料の実現に向けた研究を行っています。

原子力や核融合あるいはエネルギー問題という社会とは切り離せない研究テーマを取り扱っているため、科学技術コミュニケーション活動も重視しています。笠田は、北海道大学科学技術コミュニケーター養成プログラム(CoSTEP)での学びに基づく科学技術コミュニケーターとして、一般向けのLEGOを用いたワークショップや、研究者向けのワークショップのファシリテーション等の実践もしています。最近は、これまでのエネルギー科学技術コミュニケーション活動に加えて、材料科学技術コミュニケーション活動への展開を模索しております。また、核融合エネルギーに関する一般向けの解説本や、現代科学を機動戦士ガンダムの世界観と比較して解説する本の執筆にも参加しています。2022年からはバンダイナムコグループが進めるガンダムオープンイノベーション(GOI)にも参画しています。研究にまい進したい学生はもちろんのこと、このような社会活動に協力してくれる学生も大歓迎です。

さて、笠田は研究室配属を検討中の学生さんには「マッチング」を重視するように常に伝えています。研究室からは「キラキラした研究テーマ」や「キラキラした教員」の紹介が有るかもしれません。しかし、皆さんにとっては「自分が輝けるかどうか」という点が重要です。研究テーマはそのための手段であるといえますし、教員はその補助をするための教育者であるとともに共同的に研究を進める先達の研究者でもあります。笠田は自分で言うのは何ですが「話がウマい」ので騙されないようにしてくださいw。当研究室の見学時には、笠田や教員が席を外して様々な学年の所属学生とじっくりと話す機会を設けています。ただし、所属学生にも色々なタイプが居ます。笠田研には、研究科長賞や学部長賞を取ったり、海外留学していたり、各種学会での受賞していたりと華やかな学生が多く居る一方で、もちろんそうではない学生も所属しています。両者から話を聞くと色々と見えてくるかもしれません。また、自分で言うのも何ですが笠田研のテーマは社会的な文脈では意外と地味です。材料研究ってそういうものです。その代わり、多くの修士学生(博士は当然)が国際学術雑誌への投稿論文を出しており、材料工学分野では高IF雑誌にも多数掲載されいます。研究室には材料を自ら作り評価する装置がそろっていますし、金研では最先端の分析機器も共用されています。このように、研究志向の学生さんには最適な環境が整っています。このような雰囲気は、修士で就職していく(世間では一般的だが何故か当研究室ではそうでもない)学生にとっても有効です。いわゆる「ガクチカ」で他と差別化するものが無いと考えている学生さんには、研究で頑張ったということを客観的に示すことができる実績を積み上げるだけの環境とそのエビデンスが揃っているといえます。このあたりは現役の就活を終えた先輩にも話を聞いてみるとよいと思います。

そうは言っても研究室選びを始める中で、研究室というものが正直よくわからないという学生諸君も多いことと思います。特に、機械知能・航空工学科に入学した皆さんにとっては、量子サイエンスコースに配属され、その中で片平キャンパスの金属材料研究所という、よくわからないところについては不安も多いでしょう。金属材料研究所は、本学でも最も古い歴史を誇る研究所であり、理学部や工学部の他の学科の協力講座となっている20以上の研究室があります。研究所で活躍する学生の様子は、こちらの特設サイトからご覧になれます。

当研究室に少しでも興味を持った方は、笠田教授までアポをとってみてください。繰り返しますが、マッチングとは専門分野や研究内容だけで決まるものでも有りません。研究室や所属学生の雰囲気を感じることによって何かピンと来るものがあれば、それはあなたの人生をより豊かなものへと変えるチャンスかもしれません。かつて本学、そしてこの研究室の前身の研究室の学生だった私が言うのですから間違いありません。

皆さんとお会いすることを楽しみにしております。

2023/2/6 笠田竜太(量子サイエンスコース協力講座・教授)

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