こんにちは。M2の松戸です。今回は2022年10月7、8日の2日間に渡って開催されたIGRDM-schoolについて報告していきたいと思います。
さて、IGRDMとは”International Group on Radiation Damage Mechanisms”の略で日本語では「圧力容器照射損傷機構国際ワーキング・グループ」と呼ばれます。要するに原子炉圧力容器鋼の照射損傷にまつわる研究・開発の研究会・学会ということになります。今回私が参加してきたのは、米国カリフォルニア州のモントレーにて開催されたIGRDM-22の若手研究者向けのスクールです。イギリス、アメリカ、フランス、ベルギー、フランス、日本の計6か国から15名の若手研究者が集い、最新の照射研究についての理解を深める場となりました。
このスクールが開かれた経緯として、昨年の12月に亡くられた原子炉研究の第一人者として知られるRandy Nanstad氏を偲ぶ目的もあります。彼の功績を讃え、彼のような優秀な研究者を育成すべく、IGRDM-22に先駆けて勉強会が行われたわけです。
2日間の勉強会では、原子炉圧力容器鋼の照射損傷研究の背景や歴史に関する包括的な内容から、小型シャルピー試験技術の開発や破壊靭性のマスターカーブ法の開発といった、これまで自分の研究や授業では触れたことのないようなトピックも含まれていました。興味深かったのは、1日目の最後に行われた原子炉の運転期間延長認可制度についてのパネルディスカッションです。最近日本でも岸田総理の発言を受けて、国民の注目を集めているテーマでもあります。日本とアメリカでは運転期間の上限を40年と定めていますが、審査を受けることでその期間を20年延長可能としています。一方ヨーロッパは期間の上限を定めず10年ごとにレビューを受け運転期間の延長を行っています。アメリカは運転期間60年のその先、80年の運転に向けて数基すでに2回目の審査を通過しています。普段研究をしているとそういった社会や政治に直結する部分がなんとなく別次元の話のように感じられる時が多々ありますが、やはり研究をするにあたっては自分のテーマがどう社会に影響を与えどう見られているのか定期的に認識する機会が必要になってくるのではないかと思います。
2日間のボリューム満点の勉強会の後、モントレープラザホテルにてレセプションが開かれました。故人Randy Nanstad氏の愛した赤ワインをお供に、聴講者と講師陣とでレセプションが行われました。会場はモントレーの海岸を一望できるモントレープラザホテルです。業界のベテランたちとお話しするのは緊張しましたが、その場で修士の学生があまりいなかったこともあり皆さんに優しくしていただきとても楽しく過ごすことができました。
残念ながらIGRDM-22の学会の方には参加できなかったのですが、照射関連の理解や原子炉圧力容器鋼研究のジェネラルな知識を深める非常に良い機会になりました。もし来年以降開催があればぜひ笠田研の皆さんにも参加してもらいたいです!