共立出版 マグネティクス・イントロダクション2
『メタマテリアルのつくりかた−光を曲げる「磁場」とベリー位相−』
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最終更新日: 2021/10/1
[日本語]

履歴:2019年6月17日 本ページ公開
[対象としている読者][はじめに][目次]

メタマテリアルのつくりかた −光を曲げる「磁場」とベリー位相−

日本磁気学会 編
冨田知志・澤田桂 著
ISBN: 978-4-320-03572-0
2019年7月10日 出版
[共立出版]



この本では数式を全く使わずにメタマテリアルとベリー位相について説明しています。

メタマテリアルとベリー位相は、磁気分野での最前線のトピックスで、 注目を浴び続けています。 しかしプロの研究者にすら敷居が高く感じられ、きちんと理解されていないのが現状です。

そこで我々は、予備知識なしで読めるように基礎的な事柄から丁寧に説明をして、 直観的イメージを伝えます。 ある時は身近なたとえ話として、またある時は専門的な概念どうしの類似性について、 アナロジーを駆使することで、わかりやすく読みやすくなるよう工夫しています。

分野全体を概観しながらも、各話題の詳細にも踏み込んでいますので、 高校生から大学生のみならず専門内外の研究者にも有用な一冊になると思います。




【本書が対象としている読者】


【本書「はじめに」より】

本書では、磁気をテーマにしながら、派生して様々な方向に考えを巡らせていくことで、 物理の研究の一端をご紹介します。 基本的な事柄から出発して、少しずつ応用していったり、時には飛躍しながら、 最前線までご案内します。 その中で、一見すると全然関係ないような現象どうしが、実は深く結びついていたり、 あるいは同じ考え方で理解することができると、とても楽しいものです。 そうした感覚を読者のみなさんと一緒に体験できればうれしいです。

科学を研究する楽しみのひとつに、 自然の法則を探り、自然の神秘を解明することがあります。 しかし、研究を楽しむ方法はそれだけではありません。 仮に自然の法則が全てわかったとしても、それで終わりではありません。 むしろ新たなスタートラインに立ったともいえます。 このことは言語に置き換えてみると実感がもちやすいでしょう。

たとえば日本語を勉強しようと思ったときに、 「あいうえお」を覚えることから始めるとします。 このとき、「あ」の成り立ちから勉強しようとすると、 いつまで経ってもなかなかはかどりません。 まずは、「あいうえおかきくけこ・・・」と50音を全て覚えないことには始まりません。 現実としては、ある程度まで慣れて使いこなせるようになった後で、 改めて言葉の成り立ちなどを学んでいくことになるでしょう。 そして、50音を全て覚えたからといって、あいうえおを全て理解したことにはなりません。 ましてや日本語を習得した、などいえません。

ひらがなという文字の成り立ちに思いをはせると、 もとになった漢字が気になってきます。 漢字とひらがなとの関係のもとをたどり、 万葉仮名になるともはや50個では済みません。 さらにそのもとの漢字を・・・、と考えていくと文字だけでも、ものすごい数になります。 また文字の成り立ちを考えている以上は、歴史にも話がつながるし、 文字で読む文語だけでなく、実際に話されている口語も気なるし・・・などと、 どんどん勉強しなきゃいけない範囲が広がっていきます。 こんな風に考えていくと、確かに勉強すればするほど多少なりとも理解は深まっていくのですが、 完全にわかるということはなく、むしろわからないことはどんどん増える一方で、 早晩途方に暮れてしまいます。 でも、そういう広がり(そして途方に暮れること)こそが知る楽しみのひとつでもあるのです。

科学においても、実は同じようなことがいえると思います。 科学を理解していくためには、それ相応の知識が必要です。 知識を身につけるためには、勉強しなければいけません。 とはいえ、ただ勉強すればいいわけもなく、 ある程度は理解しながら勉強を進めなければいけません。 科学の研究では、 自然界の法則をいわば「言語」として使うことによって、 自分なりの物語を作ることも大きな醍醐味です。 せっかく物語を作るなら、おもしろい話にしたいものです。 そして、おもしろい物語を提供してくれる題材のひとつが磁気です。 なぜなら磁石や砂鉄などで身近な現象でありながら、 その実その中で起こっていることはとても複雑で不思議だからです。 説明しないで良い場合は理解できていても、 いざ説明しようとすると言葉に詰まる、磁気はそんな現象です。 ただし物語といっても、 こうして日本語だけで語ろうとするとなかなかうまくいきません。 研究の中ではどうしても数式を使わざるを得なくなります。 数式というと、亀の数やお釣りなどを計算をするためのものだと思われるかもしれませんね。 もちろんそういう役割もありますが、 自然科学を語る上で便利な言語のひとつとしての役割の方が大きいです。

つまり数式を使うことによって、 ちょっとした言い回しで解釈が違ってくるという曖昧さを避ける議論ができて、 客観性が高くなるのです。 また数式という共通言語を使うことで、 日本語や英語や中国語という言語の壁を乗り越えて、 理解を共有することもできます。 とはいえ数式を使うと便利な反面、 内容にとっつきにくくなってしまうことは否めません。 よって本書では、数式を一切使わずに様々な現象を説明することにします。 数式を使わない代わりに、時には例え話を出して説明します。 例え話というのは、 ある事柄を別の題材に当てはめて理解を深めるものです。 実際の研究の場でも、 いわば専門的な例え話として異なる研究分野や現象どうしに共通性を見出すことが、 時にとても重要となります。 一部、図中に数式が現れることもありますが、 本文を読んでいただく分にはそれらは無視していただいても問題ありません。

本書では、ひとつの現象を解明していく様子を一本道で説明する、 という形を必ずしもとりません。 むしろひとつの現象であっても、幾通りもの見方で考えていくという形にしようと思います。 あるいは逆に、ひとつの見方に立ちながら様々な現象に応用していく、 ということも実践していきます。 あるときは当たり前のようなことをまわりくどく説明し、 またあるときは難しい内容をさらりと流したりなど、 ムラのある説明に思われることもあるかと思います。 しかし、むしろそうした強弱を楽しんでいただければ嬉しいです。 ああでもないこうでもないと考えを巡らすことで、 多角的な視点をもつことのおもしろさをご紹介できたらと思います。

なお、できるだけわかりやすい説明を心がけますが、 わかりにくい部分もあると思います。 しかし、わからないのは読者のみなさまのせいではなく、 著者の知識や理解が至らないせいで、 小難しい説明になってしまっているだけです。 わかりにくい箇所がありましたら、 大目に見て適宜読み流していただければと思います。 さあそれでは物語を始めましょう。



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