深層学習を用いた医用画像の画質改善の評価
深層学習による領域分割を用いた画質改善
X線単純撮影(レントゲン)やCT(Computed Tomography)およびIVR(Interventional Radiology)ではX線を用いて検査や治療を行います。それらのモダリティにおいて、患者と医師双方の放射線被ばくを抑えるためには低線量での撮像が必要です。しかし、低線量での撮像では撮像画像にノイズが発生するため、医師に正しく検査・治療を行ってもらうためにはそれらのノイズを除去し画質を改善する必要があります。当研究室では、深層学習(ディープラーニング)による領域分割を用いて低線量画像の画質改善を行う方法に着目しました。
深層学習とは人間が自然に行うタスクを機械に学習させて法則性や特徴を抽出させることを指します。また、領域分割とは画像中の物体を物体ごとに分割する処理を意味します。普段、我々人間は日常生活において、視野に映っている物体を物体ごとに認識することができます。人間が自然に行っているこの作業を深層学習によって機械に学習させることで、人間に近い精度で画像中における物体認識が可能となります。例えば、下記のX線単純投影の撮像画像においてどこが肺であるのかを機械に学習させ、肺の部分のみを抽出することができます。この領域分割によって低画質の画像中の臓器をそれぞれ抽出し、臓器ごとにノイズ除去を行うことで画像全体の高画質化を図ります。
画質改善画像の評価
深層学習によって高画質化された画像は、画質を表す指標を用いて客観的に評価することが可能です。しかし、定量的に良い画質の画像であっても、その画像に医師が違和感を抱くようでは実際の医療現場に適用することはできません。一方で、定量的に悪い画質の画像でも、医師がその画像に対して違和感を抱かないようであれば、低線量の撮像画像の画質改善の要求度は低いことを意味します。したがって、高画質化された画像の評価には定量評価のみでなく、主観的評価も必要であると考えます。そして、それらの相関を探索することで、画質改善された画像が医師による診断・治療を妨げないかどうかの定量的な画質の基準を作製することを目指します。
視線追跡装置はスクリーン上における対象者の視線の動きを座標として実測することが可能です。また、取得した視線の座標から画像の注視度合をヒートマップとして出力することができます。この視線追跡装置を用いて、読影の際の医師の視線の動きを座標として定量化し解析することで、画質改善された画像の主観的な評価を行います。
画質を表す定量指標と視線追跡の結果との間に何らかの相関性があった場合、X線単純撮影やCTのみでなく、多様な医療画像の評価のツールとして視線追跡を応用できることが期待できます。
視線追跡
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