Remountable high temperature superconducting magnet - 分割型高温超伝導マグネット
Page 1 : 核融合炉における超伝導マグネット
Page 2 : 分割型高温超伝導マグネット
Page 3 : 高温超伝導導体の着脱可能な接合法の研究
Page 4 : 金属多孔質体を用いた極低温冷媒熱伝達促進法の研究
Page 5 : 分割型高温超伝導マグネットの設計検討
Page 6 : 超伝導機器応用
分割型高温超伝導マグネット
核融合炉の経済性を向上させるための技術として、当研究室では図2-1に示すような分割型高温超伝導マグネットの開発を提案しています。 超伝導マグネットを分割製造することによって巨大な熱処理炉は不要となり、また、分割製造したマグネットのセグメント(パーツ)を組み立てることで複雑形状の超伝導マグネットを建設することができます。 超伝導マグネットの一部が損傷した場合には、損傷部を修繕したり、交換することもできます。 また分割化された超伝導マグネットのセグメント(パーツ)を着脱可能とし、マグネットの組立・解体が容易になれば 炉内構造物へのアクセス性が向上し、核融合炉の保守・管理が容易になることも期待されます。
分割型TFコイル (球状トカマク炉) |
分割型ヘリカルコイル (ヘリカル炉) |
分割型TFコイル (トカマク炉) |
図2-1 分割型マグネット |
これまで核融合炉用の超伝導マグネットにはNbTiやNb3Snなどの低温超伝導体が
用いられてきました。超伝導マグネットでは、電磁力などによって、マグネットを構成する
超伝導体が動くと、熱擾乱が発生します。超伝導マグネットを構成する材料の比熱が小さいと、
この熱擾乱(発熱)によって、温度が急上昇し、臨界温度を超えてしまうクエンチという現象が起きます。
極低温では、材料の比熱が非常に小さくなるため、低温超伝導体を用いた超伝導マグネットでは、
クエンチが発生しないように様々な対策が施されています。
分割型超伝導マグネットを製作することを考えた場合、
接合部での抵抗(接合抵抗)による恒常的な発熱が問題となります。この発熱により、
接合部は、他の部分よりも温度が高い状態になります。このような状態では、臨界温度までの
裕度が小さくなるため、クエンチを起こしやすい状態となります。したがって、低温超伝導体で分割型超伝導マグネットを
作るのは非常に困難であると言えます。そこで、本コンセプトでは、超伝導マグネットの材料として、
高温超伝導体を利用することを考えています。高温超伝導体で作ったマグネットでは、運転温度を
比較的高めに取れるため(*)、材料の比熱が高くなり、接合部で多少温度上昇が起きている状況でも
熱擾乱などによるクエンチを起こしにくいという特性があります。すなわち分割型超伝導マグネットは
材料として高温超伝導体を利用することにより実現が可能になると考えられます。
また、高温超伝導マグネットの採用により、超伝導マグネットを冷却するための電力を抑えることができます。
これは運転温度が上がることによって、冷却に必要なエネルギーが減るためです。
この分割型高温超伝導マグネットを実現するためには、
分割型高温超伝導マグネットに関するプロジェクト
(1) 米国:トカマク型核融合炉開発
核融合炉の開発は、実験炉→原型炉→商用炉という手順で行われることになっています。
米国では、国際熱核融合実験炉ITERと原型炉の間に、Fusion Nuclear Science Facility(核融合核科学施設)を
建設して、核融合環境下における各種核融合機器の試験を行うこととしています。この施設の1つとして、
分割型高温超伝導マグネットを採用したVulcanという小型トカマク炉がマサチューセッツ工科大学(MIT)から
提案されています。橋爪研も、MITと連携して、分割型高温超伝導マグネットの接合技術の開発を行っています。
(2) 日本国:ヘリカル型核融合炉開発
岐阜県土岐市にある核融合科学研究所(NIFS)では、ヘリカル型原型炉FFHRの設計活動、および各種技術開発
を行っています。橋爪研とNIFSの長年の共同研究により、現在では、分割型高温超伝導マグネットは、FFHRの超伝導ヘリカル
コイルの第一設計案として採用されるに至りました。FFHRでは、2つの分割型高温超伝導マグネットの設計案があり、
1つは図2-2に示される導体接続巻線方式す。これは、橋爪研の分割型高温超伝導マグネットの案を
もとにNIFSで提案されたものです。この案では、短尺の導体を次々に接続していきながらコイル状に巻いて行くと
いう手法を取ります。完成後に解体することはできませんが、着脱可能とする案よりも技術的には簡単にできると
考えられています。解体ができなくても、複雑かつ巨大なヘリカルコイルを作るという意味では、革新的な
設計案と言えます。もう1つの案が図2-3に示すコイルセグメント着脱可能方式で、元々、橋爪研で
提案されていたものです。
導体接続巻線方式 |
コイルセグメント着脱可能方式 |