シリーズ 青葉山 55  タチツボスミレ 


 



辺を飾る薄紫色。ハウチワカエデの葉が広がり出し林を歩くと、足元に直径2cmほどの花を見つけた。

小さな5枚の花弁は、それぞれ微妙に形が違う。花の後ろに、細長い円筒状のものが突き出ている。蜜(みつ)の貯蔵庫「距(きょ)」だ。このタチツボスミレ、地上茎のある数少ないスミレでもある。

帰り道、淡い紅色をした大型のアケボノスミレ、「距」が特に長いナガハシスミレを見つけた。青葉山では10種を越すスミレの仲間が確認されているが、タチツボスミレはその中でも代表的なものだ。

(河北新報社提供 初出 1991.4.15)


タチツボスミレ
Viola grypoceras A.Gray
スミレ科

林縁や路傍にふつう。

スミレ科スミレ属の多年生の種は2種類の花をつけることが知られています。ひとつは開放花。これは上の写真のような普通に見られる花で春に開きます。もうひとつは閉鎖花。開放花が咲いた後も夏にかけて葉腋(ようえき)から次々につぼみを出しますが、これはいつまでも花を開かない閉鎖花と呼ばれる花です。自家受粉によって結実します。

 閉鎖花をつける植物の例 → ミゾソバ

スミレ属の植物は世界に約400種あり、日本には50種ほどが生育しています。タチツボスミレは日本で最も普通に見られるスミレのひとつです。平地から山地の半日陰地でしばしば群れをなして生育しているのを見ることができます。