シリーズ 青葉山 54  カタクリ 


 

All by Kahoku Shimpo. 

 

床一面に"春の妖(よう)精"が咲いた。周囲をハナバチの仲間が飛び回っている。コナラの落ち葉をつき破って、3cm程に伸びた芽を見つけたのは先月初旬。しかし、この芽は今年花を付けなかった。カタクリは、種子が落ちてから花が咲くまで、7年もの年月がかかる*。

花をのぞくと、雌しべの奥に緑色の「子房」が見えた。虫によって受粉し、種子が成長する虫媒花。

芳香を発する種子は、茎が倒れて広がるほか、アリ**によっても運ばれる。効果的な種子分散だ。

(河北新報社提供 初出 1991.4.13)


カタクリ
Erythronium japonicum Decne.
ユリ科

亀岡道周辺などの明るい林床にややふつう。


→ 1998年春の企画展「カタクリの生活史」については制作者のノートを。


* 発芽から数えて、だいたい7〜8年で開花に至ります。条件がよければもっと早くに咲く個体もあります。虫が盛んにやってきて受粉し、沢山の種子が実ると大量のエネルギーが消費されます。そのような個体は、翌年開花を休みます。
** → 種子を運ぶアリたち