シリーズ 青葉山 26  カキドオシ 


 
え込んだ朝、霜柱を踏みながら森を歩く。ザクッ、ザクッ。過ぎ去った幼いころを思い出す、懐かしい音と感触だ。
一面に霜が降りた山道で"砂糖菓子"を見つけた。息を吹きかけると砂糖は、みるみる溶けていく。顔を出したのはカキドオシ。ハート形をした葉の上で、生まれたばかりの水滴が朝の光を浴びて踊っている。
初夏、淡い紫色の小さな花を無数に付け、辺り一面に芳香を漂わせるカキドオシだが、"冬眠中"のこの季節は、シソ科特有の香りがほのかにするだけだった。
和名の「垣通し」は、つるを垣根の向こう側まで伸ばす意から付けられた。

(河北新報社提供 初出 1991.2.21)


カキドオシ
Glechoma hederacea L. subsp. grandis (A.Gray) Hara
シソ科

多年草。記念館周辺などの草地や路傍にふつう。玉のように見えますが、葉に霜が降りた様子です。春の花が終ったあと、ストロンをのばして広がる繁殖力旺盛な種類。ハート型の葉・断面が正方形の茎(くき)・においで識別できます。

花は4月〜5月