シリーズ 青葉山 24  キヅタ 


 
木立の中、青々としたキヅタの姿はひと際目を引く。
気根と呼ばれる根で、石や木を縦横無尽によじ登る。
"日照権"を奪われたヤマモミジはもう腐りかけている*。

 

イヌシデにもからみ付く。
春を待つ芽のすぐそばを"招かれざる客"キヅタの赤い若枝が横切る。
 
 
キヅタの根元にコマユバチの仲間の繭を見つけた**。
大きさは1cmに満たない。
成虫になり、丸い小部屋のドアをかみ切って旅立った後だった。

(河北新報社提供 初出 1991.2.19)


キヅタ
Hedera rhombea (Miq.) Bean
ウコギ科

常緑低木。一号道路沿いなどの林縁にふつう。東アジアに分布。ヨーロッパのH.helix(セイヨウキヅタ)からは園芸種が多く、いわゆる「アイビー」として親しまれている。

 
* これがよじ登り植物の宿命。宿主が倒れたら、キヅタは次のよりかかり相手を捜さなくてはいけません。
** 「まゆ」の集合体。小さな小さなハチたちがそれぞれ自分の出口をあけて出ていった跡。