古から、自然の力にまかせた森林更新を繰り返してきたモミの原生林。雲間から差し込む鈍い冬の日差しに、ほんの一瞬だけ華やいで見えた。
高さ40mにも達するマツ科の常緑高木のモミ。冬空を突くようにして立つ姿には風格さえ感じる。
仙台市街地西部の青葉山(146m)から西方に広がる緑濃い丘陵地は、古くから杜(もり)の都の象徴として親しまれてきた。モミの原生林が残る一帯は、学術上も貴重な地域として1972年、国の天然記念物に指定された。
しかし近年、「聖域」を脅かす開発の手が忍び寄り、市民の間には緑を失うことへの危機意識が広まり始めた。
(河北新報社提供 初出 1991.1.21)
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