研究内容

資源とCO2の循環をより効率的に。同時に環境浄化も!

資源循環・炭酸塩鉱物化

炭酸塩鉱物化技術を利用することでCO2と資源の循環ループを新たに構築するための研究をしています。

CaO/MgO + CO2 → CaCO3/MgCO3

炭酸塩鉱物化の反応式を最も簡単にすると上式になります。この反応によって大気中などのCO2を吸収して安定な炭酸塩が製造でき、CO2の貯留や有効活用につなげることができます。

この反応の原料となる化合物は、実際には酸化物、水酸化物、酸化物の水和物等です。例として鉄鋼スラグ、廃コンクリート、石炭灰等の産業副産物や廃鉱水、海水(かん水)等、コンクリート製品、生コンクリートが用いられます。

イメージ図: Izumi et al., J. Clean. Prod. 312, 127618, 2021.より引用

炭酸塩鉱物化技術の特徴

炭酸塩鉱物化技術は、他の多くのCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)技術とは異なり、反応のGibbsエネルギー変化が負であり、基本的に自発的に進行する反応を利用しています。

炭酸塩鉱物化技術には以下のような特徴があります。

  • 自発的に進行する反応(反応のGibbsエネルギーが負)
  • 水素(CO2フリー)を必要としない
  • CO2との高い反応選択性
  • 純度や圧力の高いCO2を必要としない
  • 炭酸塩、骨材、コンクリート製品の市場規模が大きい
  • 対象とする岩石や廃棄物によっては反応速度が非常に遅いため、その合理的な加速手段が必要。

環境浄化技術

いろいろな環境浄化技術の研究開発にも取り組んでいます。

コンクリート系材料から製造した環境浄化材に関する研究と実用化を行っています。

この環境浄化材は、水中のリン酸等の陰イオンの除去や中和に用いることができます。左の図は、この環境浄化材(新規中和材)を、酸性坑廃水の処理に使用した時の様子です。従来の中和剤(水酸化カルシウム)と比較しても凝集性や沈降性がよいことが見てとれます。

図:IIZUKA et al., Minerals Engineering, 2022, 188: 107819.より引用

電気的な水処理の方法についても研究を行っています。

バイポーラ膜(BPM)を用いた電気透析法を利用することで、薬剤の添加をすることなく、溶液のpHを変化させて、水中のイオンの除去や濃縮が可能です。左の図では、水中のリン酸(H3PO4)を除去、濃縮する様子を示しています。

図: IIZUKA et al, ISIJ International, 2023, 63.7: 1172-1177.より引用

選択的破砕処理(高電圧パルス破砕)

新しい破砕技術を利用した複合材料の選択的破砕処理に関する研究も行っています。

高電圧パルス破砕技術は、水中で対象に高電圧をパルス(短時間)で複数回印加することで、対象を破砕する技術です。アモルファスタイプを含む各種の太陽光発電パネル等を対象に基礎研究を進めています。